新・オーディオ入門 5
『オーディオはよくわからないけど良い音で音楽を聴きたい』、『オーディオ歴は長いけどこれは知らなかった!』というお話を聴くことがあります。 新オーディオ入門はオーディオの基礎についてエンジニアの視点から初心者の方にも判りやすく解説していくものです。 タイトルは私が10代の時に愛読した『オーディオ入門』から拝借しました。 私がオーディオに携わることになったきっかけの本です。 とても判りやすく説明されていて、手元に置いて辞書のように使っていました。 『新・オーディオ入門』はその現代版となれるよう書き進めたいと思います。
● RCAジャック
RCAはRadio Corporation of Americaの略で1919年にアメリカでのラジオ放送を普及させるための国策企業として誕生しました。
RCAレコードやNBC放送を経営する一方、ラジオに使用する真空管やパーツの開発も行い、その中のひとつにRCA端子があります。
ピンジャックとも呼ばれていますが、現在でもオーディオコンポーネントを接続するための最もポピュラーな端子です。
RCA端子のケーブル側をRCAプラグ、機器側をRCAジャックと呼びます。
● 接触抵抗
ケーブルを端子で接続する場合に接触部分の面積が広い方が接触部分で発生するロスは少なくなります。
また、接触している金属同士がぴったりと押し付けられているような構造の端子もロスは少なくなります。
これらのロスを接触抵抗といいます。大電流を流すケーブルでは特に接触抵抗が問題になります。
スピーカー端子や電源コンセントは接触抵抗の小さいものを選ぶ必要があります。
● ハイレゾ
High-Resolution Audioの略で高解像度の音源を指します。実はハイレゾの定義はあやふやです。
CDフォーマットである44.1kHz/16bitを上回る解像度のものはすべてハイレゾといわれていますが、
日本オーディオ協会では96kHz/24bit以上としているようです。
また、パワーアンプ等のアナログ機器では40KHz以上の帯域をもつ機器としています。
現在は96kHz/24bitがハイレゾの標準で、192kHz/24bitが高音質な音源と認識されています。
● パワードスピーカー
パワーアンプが内蔵されたスピーカーシステムです。スピーカーの特性に合わせたパワーアンプを使用することができるため小型で高性能です。
反面、パワーアンプを取り換えて楽しむことができないのでホームオーディオではあまり使用されず、業務用や楽器用として使用されています。
● 電力増幅
一般的な増幅回路は電圧増幅回路です。例えば、1vを5vに増幅するような回路です。
スピーカーをドライブするためには電圧だけでなく電力が必要になります。
そこで電圧に加えて電流も増幅する電力増幅回路を使用することになります。
オーディオ機器ではパワーアンプやプリメインアンプ以外でもヘッドホンアンプにも使用されています。
● フォノイコライザー回路
レコード盤には、低域は小さな音で、高域は大きな音で録音されています。
再生時は低域は大きく、高域は小さくするイコライジング(等化)を行うことでバランスよく聴くことができます。
イコライジングのカーブはRIAA(アメリカレコード協会)によって制定されたRIAAカーブが使用されています。
このイコライジングを行う増幅回路をフォノイコライザー回路と呼び、
フォノイコライザー回路が搭載されているアナログレコード再生用のアンプをフォノアンプといいます。
日本ではフォノイコライザーと呼ばれることもありますが、海外ではフォノアンプが一般的です。
● トーンコントロール、ラウドネスコントロール、バランスコントロール
プリアンプ編の『2024.1.5 トーンコントロール』、
『2024.1.6 今や絶滅状態の便利な機能 vol.1』、『2024.1.7 今や絶滅状態の便利な機能 vol.2』に詳しく書かれていますのでそちらをご参照下さい。
● バッファ回路(緩衝増幅回路)
仮にプリアンプとパワーアンプを接続して使用する場合、プリアンプはパワーアンプの影響を受け、パワーアンプはプリアンプの影響を受けます。
これが機器の相性といわれるものです。
このようなとき、音質は変化せず、接続した回路の影響も受けない回路を間に使用することで、プリアンプ、パワーアンプが安定に動作し、
その性能を十分に発揮させることができるようになります。梱包に使用する緩衝材と同様の効果から緩衝増幅回路と言われます。
● 真空管、トランジスター、FET 、IGBT
『真空管』はパワーアンプ編『2024.1.15 パワーアンプの出力段に使用する真空管の種類』、
『トランジスター・FET』はパーツ編『2024.1.21 半導体』に詳しく解説されていますので、
こちらをご覧ください。
IGBTはInsulated Gate Bipolar Transistorの略で入力部はFET、出力部はトランジスターという構造の比較的新しい半導体素子です。
FETは入力インピーダンスが高く、高温で使用しても安定しています。
トランジスターは瞬間的な大電流に対応し、故障しにくい素子です。IGBTは両者の良い部分を併せ持った半導体素子です。
● 12AU7
12AU7はミニチュア管と呼ばれる親指ほどの大きさの小形真空管です。1つのガラス管の中に2つのトライオードが封入されています。
特性がよく揃っているのでステレオで使用することもできます。
アメリカでは12AU7、欧州ではECC82と呼ばれており、現在でもチェコや中国、ロシア等で大量に生産されています。
利得はあまり高くはありませんが、インピーダンスが低く、バッファーアンプやパワーアンプの最終段のひとつ前のドライバーに使用されます。
ギターアンプにも多く使われています。
12AT7、12AX7と並んで最も使用頻度の高い真空管です。
● OEM(相手先ブランドによる生産)
電気製品は製造メーカーによって得手不得手があります。
例えば、パワーアンプが得意でもCDプレーヤーは不得意というメーカーはよく聴きます。
こんなときにCDが得意な別のメーカーに開発を依頼し、設計から生産までを他社で行い、
販売のみを自社で行うという仕組みがOEM(相手先ブランドによる生産)です。
お互いに得意な製品を手掛けることでクオリティの高いオーディオコンポーネントを短期間、低コストで市場に導入することが可能です。
反面、画一的な製品になりやすいというデメリットがあります。
● ラック
ラックはオーディオコンポーネント専用の棚です。
業務用のオーディオラックは第2次世界大戦で米軍が通信機を格納していた規格(19インチラック)の流れを汲むもので、
フロントパネルの幅は48.26cmに統一されています。そのため、ほとんどのオーディオコンポーネントのボディは幅45cm以下で設計されています。
オーディオアクセサリー編『2023.12.27 オーディオラック』もご参照ください。
● 出力インピーダンス・入力インピーダンス
例えば、CDとアンプを接続するときにCDの送り出しインピーダンスが出力インピーダンス、アンプが音楽信号を受け取るときのインピーダンスが入力インピーダンスです。一般的なCDの出力インピーダンスは1KΩ以下、アンプの入力インピーダンスは10KΩ以上です。出力インピーダンスは低い方が、入力インピーダンスが高い方が、よりロスなく音楽信号を伝達することができます。これはボールとバットの関係に似ています。バットはより重い方が、ボールはより軽い方がより遠くまでボールを打ち出すことができます。
もしCDの出力インピーダンスが10KΩ、アンプの入力インピーダンスが1KΩだとすると、
大きなロスが発生し音楽信号は1/10に減衰してしまいます。
● 高周波ノイズ
空間には無数の電波が飛んでいます。ラジオやテレビ、携帯電話、Wifi、GPS、Bluetooth等沢山あります。
一般に電磁波と呼ばれるパソコンが発生するデジタルノイズや調光器からのインバーターノイズも電波の一種です。
これら本来有益である電波が運悪くオーディオコンポーネントに悪影響を与えると『高周波ノイズ』と呼ばれます。
『ノイズに弱いアンプ』と聴きますがこれは正確ではありません。
ノイズの周波数成分は20KHz~10GHzとかなり広範囲。
どのようなアンプでもこの中のどこかの周波数に対しては必ず悪影響を受けます。
ノイズ対策編『2024.2.23 オーディオシステム外でのノイズ対策』もご参照ください。
● モノラル
1つのスピーカーから音楽を再生するオーディオシステム。1950年代までの音楽再生はモノラルでした。
50~60年代前半はステレオ、モノラル、疑似ステレオが混在しており、60年代中盤以降は左右に設置した2つのスピーカーを使用して立体感のあるステレオへと完全に移行していきます。
● 蓄音機
電気を使用せずにレコード再生を行うレコードプレーヤーです。
レコード盤を回転させるためにモーターではなくゼンマイを使用し、
ピックアップした微小信号を増幅するためにアンプではなく、超高能率のホーンを使用しています。
● 1チャンネル、2チャンネル
モノラル再生を1チャンネルと呼ぶことがあります。ステレオは2チャンネルと言われます。
ステレオにサブウーハーを追加して3チャンネル、ステレオにリアスピーカーを加えて4チャンネル、
4チャンネルにセンターチャンネルを加えて5チャンネルと呼ぶこともあります。
● ステレオ感
ステレオはかつて立体音響とも言われていました。
左右に置かれたスピーカーでオーケストラを再生すると、バイオリンは左の方から聴こえてきます。
これはバイオリンの音が右のスピーカーより左のスピーカーの方が大きく録音されているからと思われる方もあるかと思いますが、
録音時に左右のマイクはそれ程離れた位置にはありませんのでバイオリンの音量は右チャンネルも左チャンネルもほぼ同じです。
人はステレオ感を音量ではなく、時間によって感じ取っています。
音は1秒間に340mの速度で伝達します。
ヒトの左右の耳の距離は15cm程ですので、音が真左から聴こえた場合は、
左耳は右耳より1/2267秒早く聴こえ始めます。斜め前方から聴こえた場合は0~1/2267秒間での時間差を認識します。
ヒトはこの時間差から音が発生した方向を瞬時に計算しステレオ感を感じ取っています。
● 周波数特性
オーディオアンプで周波数特性といえば、10~30000Hz(-3dB)のように表示されますが、
これは中心周波数(一般的なオーディオアンプでは1KHz)に対して-3dB=71%の出力に下がった周波数が10Hzと30000Hzであるという意味です。
ここで注意しなくてはならないのは『下がり始めた周波数』ではなく『71%の出力に下がった周波数』であるという点です。
スピーカーでは更にラフで-3dBではなく、-10dB=32%が使用されます。
50Hz~30KHzというスピーカーであれば50Hzでは1/3の音量ですので注意が必要です。
● 抵抗、コンデンサー
トランジスターや真空管といった増幅素子の動作点を適正値にしたり、直流をカットするための補助的な電子部品です。
1円を切るような安価なものから数万円のものまであります。
高価なものの特徴は、精度が高い、温度特性が良い、経年変化が少ないの3点です。これらのものがオーディオ的に高音質かどうかは別の問題です。
種類についてはパーツ編『2024.1.18 抵抗器』、『2024.1.19 コンデンサー』もご覧ください。
● 低域、低中域、中域、中高域、高域
音を帯域に分けて調整する場合に低域、中域、高域と3つに分ける場合と、上記のように5つに分ける場合があります。
帯域はヒトが音楽を聴く場合と、数学的な計算とは必ずしも一致しません。
ヒトの可聴周波数は20~20000Hzですので単純に3つの帯域に分割すると低域20~200Hz、中域200~2000Hz、高域2000~20000Hzとなりますが、
人が感じ取る音を基準に考えると20~400Hz、400~4000Hz、4000~20000Hzではないでしょうか。
またヒトは生まれた時が最も高い音を聴くことができ、齢とともに可聴周波数の上限が下がっていき、60歳では10KHz程度になるといわれています。
低域、中域、高域といった概念は絶対的なものではなく、目安程度と考えた方が良いでしょう。
● CD
コンパクト・ディスクの略です。1970年代にソニーとフィリップスが共同開発しました。
CD盤の直径は12cmですが、発売当時主流だったレコード盤は30cm、25cmまたは17cmだったためコンパクト・ディスクと呼ばれました。
音声のみの収録する場合の規格は16bit、44.1KHz、640MBです。
16bitとは音楽信号を保存する際に音量を2の16乗(65536)の分解能とするという意味で、
一番音量の小さい部分と一番音量の大きい部分に65536倍の差があります。
現在のハイレゾ音源では24bit(16777216倍)の差があります。44.1KHzはサンプリング周波数です。
先ほどの16bit音量を1/44100秒ごとに記録していきます。それによって20~20000Hzの周波数特性を実現しています。現在のハイレゾ音源では
96KHz(周波数特性:20~50000Hz)が一般的で、高音質な音源では192KHz(周波数特性:20~100000Hz)のものもあります。
640MBはデーターを保存することができる容量です。収録時間は74分です。
現在では小型のUSBメモリでも64GBほどもありますのでCD盤の100倍の容量です。
CDは1970年代に開発された技術です。現在の規格・再生方法と比較するとかなり見劣りしてしまいます。
● DVD
Digital Versatile Discの略で、デジタル多用途ディスクの意味です。
東芝が1996年に開発しました。記録容量は4.7GBでCDの6倍以上の情報を記録することが可能です。
両面使用することもでき、二層に記録する方法も確立され最大で17.08GBもの容量になりました。
そのためDVDオーディオといったサンプリング周波数を上げて周波数特性の広帯域化・高音質化をはかった規格や、
映像を同時に記録するなど多くの規格が生まれましたが、
現在ではBlu-ray DiscやUSBメモリに取って変わられています。
● IC
パーツ編『2024.1.21 半導体』をご参照下さい。
今回解説する用語はすべてデジタルオーディオ初期から使用されてきたデジタル音声の伝送手段です。
● 同軸(アンバランス)
75オームの同軸ケーブルを使用した伝送方法です。デジタル信号は情報量が多くなるほど高い周波数の信号を伝送することが求められます。
そのため数百メガヘルツまで使用可能で安価な同軸ケーブルはデジタル初期から使用され現在でも使用されています。
高価なデジタルケーブルも販売されていますが、テレビのアンテナ用ケーブルと同じ規格なので自作も簡単です。
● TOSリンク(光)
光ケーブルの一種です。それほど高い周波数まで使用することはできませんが、安価な光ケーブルとして現在でも用いられることがあります。
光ケーブルのメリットは機器間を電気的に絶縁できること。ノイズが機器間を伝達することがなくなります。
また、電源ノイズのように一見関係ないように思えるノイズが減少することもあります。
例えば、CDプレーヤーとD/Aコンバーター間には通常同軸ケーブルが用いられますが、
その場合、CDプレーヤーとD/Aコンバーターは同じ100v電源に接続されます。
CDプレーヤー→同軸ケーブル→D/Aコンバーター100v電源→CDプレーヤーというようにループ状に電源ノイズが伝送します。
その伝送経路上には音楽信号が伝送されている同軸ケーブルがあり、ノイズが混入する可能性があります。
TOSリンクを使用した場合、このような伝送経路は発生しません。
● 同軸(バランス)
業務用のデジタルケーブルとして使用されています。同軸(アンバランス)と比較してメリットは長い距離の伝送が可能になること程度です。
● STリンク(光)
海底ケーブルに使用されていた規格でハイエンドのデジタル機器に使用されていました。
ハイスピードで低損失ですが、高価で短いものの入手が難しいといったことがあり最近ではあまり使用されなくなりました。
● WAV
Waveform Audio File Formatの略で、
Windows初期のPCもOSも未熟だった時代に高音質で
音声データを記録するためのフォーマットでした。
非圧縮のPCM形式で音声データを記録方式としては最も単純。
そのため処理速度の遅い当時のPCでも再生可能でしたが、
音声データの記録に徹しているため、
作曲家や発売年といった曲の詳細情報やジャケットの画像を埋め込むことはできません。
PCが高性能になった現在ではその必要性をあまり感じないフォーマットです。
● FLAC
Free Lossless Audio Codecの略で、リニアPCM形式を可逆圧縮フォーマットです。
つまり、WAVを音質の劣化なく圧縮したフォーマットです。
ハイレゾ音源に対応し、曲の詳細情報やジャケットの画像を埋め込むことも可能です。
ハイレゾ音源では標準的なフォーマットになっています。
● MP3
大容量メモリーが高価だった当時に
音声データをいかに小さな容量で保存するかという観点から開発されたフォーマットです。
また、曲の詳細情報やジャケットの画像を埋め込むことも可能で、
ミュージックプレーヤーでは標準的なフォーマットになっています。
音質はFLACには及びませんが、近年、MP3デコーダー(変換器)がよくなり、
かなり高音質になりました。
● MP4
動画を保存するためのフォーマットで、音声データ部分は多くの形式が使用されていますが、
その大半はMP3です。
● TV BOX
テレビで動画ファイルを再生したり、YouTubeを閲覧するためのこがたのメディアプレーヤーです。
USBメモリー上に保存したFLAC等のハイレゾ音源の再生も可能です。数万円と比較的安価なため今後普及していくと思われます。
● 能率
90dB/W/mのように表し、1wのパワーを入れて1mの距離で聴くと90dBの音量という意味になります。
90dBはカラオケボックスでの音量程と言われています。
同様に100dBのスピーカーに0.3wのパワーを入れて1mの位置で聴いても音量は90dBです。
オーディオ誌を見ると90dBのスピーカーよりも100dBのスピーカーの方が
「力強い音がする」「ハイスピードな音」というような事が書かれていますが、能率でそのような要素を計ることはできません。
これは大口径で軽いコーン紙の高能率のスピーカーと
小口径でmoが大きいコーン紙の能率の低いスピーカーを比較しての事でしょうが、
最近ではマグネットやコーン紙に新素材が使用されるため
「力強い音がする」「ハイスピードな音」の小口径スピーカーもたくさんあります。
オーディオ豆知識編『2023.12.22 パワーアンプの出力はどのくらい必要?』もご参照ください。
● フェライトマグネット
学校のカラーマグネット等に使用されています。鉄工業で生じた酸化鉄を使用して製造するので安価です。
コストパフォーマンスに優れています。陶器のように焼き固めているためもろく、磁力もそれ程強くはありません。
● アルニコマグネット
アルミニウム・ニッケル・コバルトを原材料としたマグネットです。アルニコの名前は原材料 の頭文字を並べたものです。
1960年代までは磁石の中心的存在でしたが、コンゴ動乱により、コバルトが高騰しフェライトマグネットに取って代わられました。
フェライトマグネットの2倍ほどの磁力です。
● ネオジウムマグネット
1984年、住友特殊金属の佐川眞人氏によって発明されたネオジム、鉄、ボロンを主成分とするマグネット。
磁力はフェライトマグネットの8倍あり、永久磁石で最も強力。
● レコード盤の反り
レコード盤は垂直に保管しなければなりません。斜めに立てかけたり、平積みにするとレコード盤が反ってしまいます。
LPでは3cm程も反ることがあり、このようなレコード盤は針飛びが発生したり、超低域のノイズが重畳したりします。
LP盤は1分間に33 1/3回転します。1秒間では0.555回転です。
そのため反ったレコードでは1.11Hzのノイズが重畳することになります。
最近のオーディオアンプは20Hz以下まで増幅するものも珍しくありません。
このようなアンプと組み合わせるとスピーカーのウーハーが約1秒間隔で大きく振幅する現象が発生します。
この現象はスピーカーの歪を増大させ、パワーアンプのエネルギーを無駄に使うことになるので注意が必要です。
反ったレコードを元に戻す方法はいくつかありますが、完全に戻ることはありません。
嘗てはズボンプレス機のような反りを治す機械も販売されていましたが、あまりおすすめはできません。
● MMカートリッジの負荷インピーダンスは47キロオーム、MCカートリッジは1~100オーム
カートリッジはメーカーが指定する値の負荷インピーダンスのときに周波数特性が最も平坦になるよう設計されています。
カートリッジにはレコード盤に刻まれた音楽信号を電気信号に変換するためにコイルが使用されています。
MMカートリッジのコイルはカートリッジのボディに取り付けられており設計上の自由度が高いため巻き数を多く取る事ができます。
そこで負荷インピーダンスを47キロオームとし、出力電圧を大きくとる規格が一般的になりました。
MCカートリッジのコイルはは感知レバーに取り付けられているため設計の自由度は少なく、巻き数も多くはとれません。
そのため負荷インピーダンス側で最適値を合わせるしかなく、出力電圧も低くなってしまいます。
そのため昇圧トランスやMC専用のフォノアンプが必要になります。
● RCA
用語解説編『2024.2.29更新『2023.11.29 セパレートとプリメイン』の用語解説』をご参照下さい。
● 塩化ビニル
灰色の水道管用のパイプと同じ素材です。熱をかけてプレスすることで容易にそして大量に成型することができます。
そのためレコード盤は熱に弱く、暖房器具の傍や夏の車の中に置いておくと短時間で反ってしまうので注意が必要です。
● 摩擦熱によってスタイラスが欠けていく
スタイラス(針)はダイヤモンド(または人口ダイヤ)で作られていますので柔らかな塩化ビニルのレコード盤をいくらかけても減ることはありません。
しかしながら、ダイヤは熱に弱いので、スタイラスにこびりついた燃え易い塩化ビニルの削りカスが摩擦熱によって発熱し、ダイヤが欠けてしまうことがあります。
これが『針が減る』という現象です。
● EP盤(ドーナツ盤)
アナログレコード編 『2023.12.21 レコード盤の種類』をご参照下さい。
● 針圧
針圧とはレコードを再生するときに針がレコード盤の溝を正確に追従するように針につけた重りの重さです。
1950年代以前のSPレコードの時代には何十グラムも必要でしたが、LP時代になり数グラムとなり、
1970年代後半から1980年代はハイコンプライアンスが流行し、1g程度の針圧のカートリッジも発売されていました。
現在は1.5gから2gが標準的な値です。針圧の適正値はカートリッジによって異なりますが、ある程度の幅をもって規定されています。
規定値内であれば好みや他のオーディオコンポーネントとの相性を考えて自由に設定してかまいません。
重く設定すると低域にアクセントがつきますが、歪みが増え、軽く設定すると綺麗な音になりますが、低域は軽くなります。
● 38cmウーハー
口径が38cmのウーハーです。15インチウーハーとも呼ばれています。
大口径ウーハーは46cmや30cmのものもありますが、多くのスピーカーユニットメーカーで38cmのウーハーが大口径ウーハーの基本形とされています。
1960年代までは能率が110dB程もあるフルレンジに近いような特性の38cmウーハーもありましたが、
その後、最低周波数20Hzに近づけるような超低域再生を重視した能率95dBほどの38cmウーハーが主流となりました。
近年では立ち上がり特性の良い20cm程度のウーハーを複数使用することで20Hz近くまで再生することが可能になり、
ハイスピードでダイナミックな低域が再生できることから、38cmウーハーはあまり使用されなくなりました。
● リスニングルームの反射
スピーカーの再生音は耳に直接届く直接音の他に、リスニングルーム内で壁や床、窓等に反射し耳に届く反射音があります。
適度な反射音は音楽がナチュラルに聴こえるようになり好ましいのですが、過剰な反射音は歪を増加させ、音場を劣化させます。
このようなときは吸音パネルを使用して特定の場所からの反射を減少させたり、特定の周波数の音を吸収することで、
過剰な反射音を作り出さないようにします。
● 拡散
これまでのリスニングルームでの過剰な反射音の対策は吸収することで防いできましたが、
最近では音を拡散させることで耳につきにくくする方法がとられることもあります。
壁に表面がデコボコしている拡散用パネルを貼ったり、壁を研磨していない石材とするような方法がとられます。
嘗ては吸音しか行ってこなかったようなレコーディングスタジオでも最近は拡散パネルが取り付けられているようなところも目にします。
拡散は吸収よりもセッティングの難易度は高いものの、自然な余韻を作り出すことができます。
● テーブルタップ
100v電源を複数使用することができる延長ケーブルです。
コンセントボックスと呼ぶこともあります。正式な呼び分けはありませんが、
コンセントボックスはケーブルレスで好きなケーブルに付け替えることが可能なもの。
テーブルタップはケーブル付のコンセントボックスで簡易なものを指すことが多いように思います。
テーブルタップには電流の制限があります。簡易なものでは5Aや7Aというものもありますが、オーディオ用としては十分なクオリティではありません。
オーディオ用には15Aのものをお勧めします。
● オーディオ用のケーブル
オーディオアクセサリー編『2024.1.2 オーディオ用ケーブルの種類 vol.2』をご参照下さい。
● ノイズフィルターとノイズカットトランス
ノイズフィルターとノイズカットトランスは両方とも電源ノイズを減少させるアクセサリーですが、その仕組みは大きく異なります。
ノイズフィルターはコイルとコンデンサーを使用して設定した周波数以上をカットするものです。
設定する周波数を低くとると多くのノイズをカットすることができますが、ノイズフィルターのロスも大きくなります。
こういったフィルターはプリアンプ等の前段機器に使用します。
設定する周波数を高くとるとノイズはあまりとれませんが、フィルターによるロスも小さく抑えることができます。
こういったフィルターはパワーアンプに使用します。
ノイズカットトランスはトランスの高域特性の悪さを逆に活用したものでトランスを使用します。
大容量の電源ではトランスは大きく高価になりますが、比較的少ないロスでノイズを減少させることが可能です。
理想的な使用方法としては前段機器には設定周波数を低くとったノイズフィルター、パワーアンプには大容量のノイズカットトランスを使い、
CD等のデジタル機器とプリアンプ等のアナログ機器を分けて2台のノイズフィルターを使用することでさらに効果的にノイズカットが実現できます。
● ブックシェル型フスピーカー
スピーカー編『2023.12.8 ブックシェルフ型、フロアー型、トールボーイ型』をご参照ください。
● バスレフポート
バスレフレックス型(バスレフ型)スピーカーにおいて超低域を増強する再生孔です。
ウーハーユニットからは低音が再生されますが、エンクロージャーの内側の(裏側)にも音は放射されます。
これを位相を整えた上でバスレフポートからリスナーに向けて再放射します。
この形式のスピーカーはエンクロージャー内部のバス(低音)をリスナーへ再放射(レフレックス)するためバスレフレックス型と呼ばれています。
ことのきバスレフポートの筒状の形状によって放射される音を超低域のみに限定することで
ウーハーユニットから再生される音の内超低域のみをバスレフポートから補完し
スピーカーシステム全体の周波数特性を伸ばしています。
● サウンドステージ
音場と訳されます。ステレオ再生では左右のスピーカーから左右の耳に到達する音の時間差から音の方向を検出しています。
同様に奥行き方向の距離感を感じることができますし、音楽信号に収録されている反響音や反射音から上下方向をも認識することができます。
脳はこれらの情報から3次元的な楽器の位置関係を割り出します。
これをサウンドステージといいます。ただし、左右の耳に到達する時間差の情報や反響音・反射音の情報は楽器からの直接音に対してごく僅かです。
サウンドステージはこういった微小な情報をも正確に再現するオーディオシステムでないと再現できません。
そのため正確なサウンドステージの再生はオーディオシステムのクオリティーを示す指標となっています。
● トールボーイ型
スピーカー編『2023.12.8 ブックシェルフ型、フロアー型、トールボーイ型』をご参照ください。
● 電気ブレーキ
電気ブレーキは電車のブレーキシステムに起源があります。電車が減速するときは2つの方法があり、1つは物理的なブレーキを使用する方法。
もうひとつが電気ブレーキです。通常電車は架線から電気の供給を受けて列車内にあるモーターを回して動力とします。
電気ブレーキで減速する際は車両が動いている力をモーターに伝達させモーターを負荷として、運動エネルギーを電気エネルギーに変換しています。
実はモーターと発電機は同じ原理で動作しており、
電気を回転力に変換するものをモーター、回転力を電気に変換するものを発電機と呼んでいるにすぎません。
電車の減速時運動エネルギーから変換された電気は架線に戻し、他の電車の動力源として再利用されるのです。
近年電車がエコな乗り物とされているのはこういった側面もあります。
この仕組みはハイブリッドカーに応用され、減速時のエネルギーでリチウムイオン電池を充電することで燃費を向上させています。
オーディオシステムにおける電気ブレーキはスピーカーが発電機となり発した余分な電気=歪を抵抗で熱に変換しています。
● NFB回路
Negative Feedbackの略で負帰還を意味します。
出力電圧の一部を入力に戻す手法で、歪率の向上や周波数特性の改善、出力インピーダンスの低減等の改善が見込まれる上に回路はシンプルです。
しかし、NFB回路を敬遠する方もあります。
NFB回路によって見た目の特性が改善されているだけで増幅回路本来の特性を向上させるべきだと主張されています。
正論ですが、歪率や出力インピーダンスの低減を行うためには10倍位の大容量の増幅回路を設計し、
それをあえて1/10位で使用する他なく、周波数特性の改善に至っては画期的な方法はありません。
NFB回路を使用しないのであればコストは10倍以上になることでしょう。それをあえて行っているアンプメーカーもありますが、
現在でもほとんどのアンプでNFB回路が使用されていることを考えるとコストに見合っていないと考えざるを得ません。
● 『クラシック用』『JAZZ用』
1980年代までのパワーアンプには2種のスピーカーを切り替える機能がありました。
『クラシック用』『JAZZ用』のように2種のスピーカーを切り替えて楽しむオーディオファンも多かったように思います。
クラシックはイギリスのタンノイ、JAZZはアメリカのJBLというのが定番でした。
その後、本当に良いスピーカーであればどのようなジャンルであっても良い音のはず。
2種のスピーカーを切り替えて再生できるようにしても、どちらも中途半端な音になってしまう・・・という考え方が広がり、
スピーカーセレクターは無くなってしまいました。
しかし、周波数特性ですら可聴帯域である20Hz~20000Hzを完全に再生することができない現代の技術力で
『どのようなジャンルであっても良い音のスピーカー』などというものの実現はまだまだ先のお話でしょう。
また、楽器によってはジャンルによってパーツの一部を変更することがあります。
例えば、テナーサックスのマウスピースは、吹奏楽ではセルマー、JAZZではリンクが定番です。
楽器ですらジャンルによる変化が認められているのですから音楽を再生するスピーカーに認めないというのはおかしな話です。
● 『シンプル・イズ・ベスト』
『接点によって音質劣化する』ので接点は少ない方がよい・・・という『シンプル・イズ・ベスト』の考え方も現代では古い考え方になってしまいました。
この考え方が広がったのは1980年代初頭だったと思います。
40年間でコネクション技術は進歩しました。接触抵抗、経年変化のほか、すべての電気特性が向上しています。
ムジカでは、自社のオーディオコンポーネントに使用されている一般的なプレス仕上げにニッケルメッキのRCAジャックを、
真鍮削り出しにロジウムメッキのRCAジャックに交換するカスタマイズを行っています。
ブラインドテストを行っても『接点によって音質劣化する』ことを感じることができないクオリティのRCAジャックが存在するのも事実です。
● フレッチャー=マンソン・カーブ
ヒトが聴こえる音域は20~20000Hzといわれていますが、その帯域内のすべての周波数で同じ音量に聴こえのではありません。
例えば、60dBの音量(新幹線の車内位の音量)で音楽を再生していた場合、中域の1KHzと低域の100Hzの音量を比較すると、
ヒトには100Hzの音は1KHzの音の1/10の音量でしか聴こえないのです。
ところが、80dBの音量(地下鉄の車内位の音量)で音楽を再生した場合には、100Hzの音は1KHzの音の1/3の音量で聴こえるようになります。
さらに音量を上げて100dBの音量(自動車のクラクション位の音量)で音楽を再生した場合、100Hzの音は1KHzの音の1/2の音量で聴こえるようになります。
音量を上げていくほど中域と低域の差が縮まっていくことがわかります。これをグラフ化したものがフレッチャー=マンソン・カーブです。
よく『小さい音で音楽を聴くと迫力がない』といわれます。
普段80dBの音量で音楽を聴いている方が、1/10の音量の60dBで音楽を聴くと、音量を縛った以上に迫力がなくなるということですが、
この場合、音楽の迫力には大きなウエイトをもつ低音は音量を絞った分の1/10ではなく、1/100の音量でしか聴こえなくなるのです。
『小さい音で音楽を聴くと迫力がない』のは気のせいではなく、耳の特性上の問題なのです。
● 2003年に東北大学の鈴木氏と竹島氏の特性カーブ
フレッチャー=マンソン・カーブは、1933年の米国ベル研究所の Fletcher氏 と Munson氏 によって発表されたものです。
その後、この特性カーブは多くの研究者によって修正が行われました。
最新のカーブは東北大学の鈴木氏と竹島氏によって2003年に発表された特性カーブです。
現在この特性カーブはISO 226:2003として国際規格になっています。
この特性カーブはヒトの耳の形状や大きさによって変化すると言われています。
また、年齢によっても変化します。そのため絶対的な規格ではなく、今後も微修正されていく可能性があります。
● ヘッドホン端子
最近ではスマホで使用するためにBluetooth ヘッドホンが増えてきました。
ホームオーディオで使用する場合はバッテリーの消耗を気にすることなく高音質な有線ヘッドホンが便利です。
ヘッドホン端子は、民生機では3.5mmステレオミニジャックが使用されていますが、嘗ては6.5mmステレオフォーンジャックが使用されていました。
6.5mmフォーンジャックは電子交換機ができるまでは電話交換に使用されていた端子で高耐久性、高信頼性の端子です。
そのため現在でも業務用の機器や楽器では6.5mmステレオフォーンジャックが使用されています。
● オープンリール
リールと呼ばれる枠に磁気テープを巻いて使用した音楽用の磁気記録メディアです。
1970年代にカセットテープが普及するまでは唯一の録音機でした。磁気テープの幅、速度、トラック、リール径には多くの規格がありました。
テープ幅は太いほど高音質な録音が可能で、多くのトラックを録音することができました。
テープ速度は速い方が高域特性に有利ですが、録音時間が短くなるという欠点がありました。
トラック数は1本の磁気テープに異なる信号を録音する数です。1トラックはモノラル録音、2トラックはステレオ録音、
4トラックはステレオで往復して録音する場合、業務用のマルチトラック録音機では1インチや2インチといった幅広のテープを使用して
最大16トラックもの録音が可能でした。
マルチトラック録音とは、オーケストラのレコーディング時は、トラックごとに、バイオリン、ビオラ、チェロ・・・のように異なる楽器を録音し、
ミキシング時にそれぞれの楽器を適正な音量に調整してマスターテープを作成するために使用されていました。
リール径は5インチから14インチまで5種ありました。
大きなリールを使用すると長尺のテープが使用できるため録音時間が長くなります。
オープンリールは逆回転が可能なため逆回転再生を使用してビートルズのように楽曲が製作されることもありました。
● ハードディスクにリッピングした音源
CDの音楽データーをパソコンのハードディスクに取り出し、音楽ファイル化することをリッピングと言います。
CDの音楽信号は2進数のデーターに変換されてCD盤に記録されているのですが、
CDを再生する1970年代の技術ではただデーターを読み出すだけが精一杯の処理速度でした。
そのため僅かな傷やほこりで読み出しエラーが発生することがあり、これをエラー訂正回路によって修正していました。
しかし、元の音楽信号に近い波形は得られますが100%同じデーターで再生できるわけではありません。
ところが、リッピングされた音楽ファイルを現代の技術のパソコンで再生すると、
十分に余裕のある読み出し速度と洗練されたデーターの読み出し方法によって
元の音楽信号と100%同じデーターで再生することができるようになりました。
つまり、CDをCDプレーヤーで再生するよりもパソコンでリッピングした音楽ファイルを再生したほうが高音質になるということです。
この場合、CDをリッピングする際にエラーが発生するのでは?と思われる方もあるかと思います。
リッピングはファイル化することでありリッピング時に音を聴いているわけではありませんので十分な時間をかけて行うことが可能です。
また、怪しいと思われるデーターは何度も読み込み直して正確なデーターとすることができるのです。
● 信号レベルがオーバーして歪んでしまった
アナログの音楽信号を増幅するためには、その音楽信号の2倍以上の電源電圧をかけた増幅回路が必要です。
電源電圧に対して音楽信号が大きすぎると歪が発生したり、波形の形が崩れてしまったりします。
このような状態を信号レベルがオーバーして歪んでしまった状態といいます。
● 音の鮮度
音楽信号が多くの回路を通過したり長いケーブルで伝送されると、歪が発生したりノイズが混入することがあります。
このように音楽信号にそれ以外の信号が重畳した状態を『音の鮮度』が悪いと表現されることがあります。