新・オーディオ入門 6
『オーディオはよくわからないけど良い音で音楽を聴きたい』、『オーディオ歴は長いけどこれは知らなかった!』というお話を聴くことがあります。 新オーディオ入門はオーディオの基礎についてエンジニアの視点から初心者の方にも判りやすく解説していくものです。 タイトルは私が10代の時に愛読した『オーディオ入門』から拝借しました。 私がオーディオに携わることになったきっかけの本です。 とても判りやすく説明されていて、手元に置いて辞書のように使っていました。 『新・オーディオ入門』はその現代版となれるよう書き進めたいと思います。
● アンプ / 増幅器
アンプはAmplifierの略で増幅器の意です。増幅器には電圧増幅器と電力増幅器があります。
電圧増幅器は音楽信号の電圧の振幅のみを増大させる回路です。利得5の電圧増幅器であれば、1vの音楽信号を入力すると5vが出力されます。
電力増幅器は電力を増大させる回路です。電力=電圧?電流ですので、電圧に変化がなくても電流が増大する場合もあります。
電圧増幅器はプリアンプに、電力増幅回路はパワーアンプのスピーカードライブ回路に使用されます。
スピーカーのインピーダンスが4オームであれば、僅か2vであってもスピーカーからは1wの音が再生されます。
スピーカーの能率が一般的な90dB/wであればその音量はカラオケ店内ほどの音量になります。
これほどの音量ですのでその電圧はわずか2vであっても増幅器としては機能していることになります。
● 電源回路
オーディオコンポーネントは交流100vで動作しますが、各増幅回路は直流で動作し、その電圧はそれぞれ異なります。
電源回路は交流を直流に変換する機能と、各増幅回路に最適な電源電圧を供給するための回路です。
電源にノイズが重畳したり、電源電圧が不安定だと増幅回路にも影響が表れ音質が劣化してしまいます。
● 大容量の電解コンデンサー
コンデンサーは電気を貯めるものです。電源回路で大容量の電解コンデンサーは変動する入力電圧を安定化したり、
一時的に大電流の出力を取り出すときに電流が不足しないよう補ったりします。
● スイッチング電源
電源回路の種類のひとつです。
嘗てはスイッチングノイズを発生すると嫌厭する方もありましたが、通常の電源よりもノイズは少なく
安定度は高く、小型軽量で低コストなため現在では多くのオーディオコンポーネントに使用されています。
● アルテックA5やA7
アルテックは1930年代に創業された米国の音響機器メーカーのブランドです。
1940年代から1970年代にかけて映画館等の業務用音響機器を中心に大きなシェアがありました。
A5とA7は『Voice of the Theatre』シリーズとして、当時の映画館や小ホール用のスピーカーシステムとして活躍しました。
いずれも38cmの高能率ウーハーと大型ホーンツィーターの2WAYでした。
家庭用として使用するには大きすぎるサイズですが、一部のマニアによって珍重されていました。
映画館等でかなりの数が使用されていましたので現在でも中古品が出回っています。
50年以上前に設計されたスピーカーですので再生周波数帯域は狭く、音質も現代のスピーカーと比べるべくもありませんが、
オーディオ史の1ページを飾ったスピーカーであることには間違いありません。
本来が映画館用のスピーカーですので最低20畳以上のリスニングルームでのご使用をおすすめします。
● シングルアンプ / プッシュプルアンプ
パワーアンプ編『2024.1.14 シングルアンプ、プッシュプルアンプ、BTLアンプ』をご参照下さい。
● 3極管 / ビーム管 / 5極管
パワーアンプ編『2024.1.15 パワーアンプの出力段に使用する真空管の種類』をご参照下さい。
● JBL LE8T
JBLは1940年代に創業された米国の音響機器メーカーのブランドです。
経営母体に変遷はありましたが、1940年代から現代にいたるまで業務用・ホームオーディオ用共人気のある音響機器ブランドです。
LE8Tは20cm径のフルレンジスピーカーユニットです。
能率が低く、鳴らしにくい一面もありましたが、当時としてはかなりの広帯域で、
当時JBLの輸入代理店だった山水電機からスピーカーシステム化されたものも発売され人気のモデルでした。
● 出力トランス
トランジスター等の半導体素子は低電圧・高電流で動作し、インピーダンスの低いスピーカーをドライブするには最適な素子です。
しかし、真空管はその特性上、高電圧・低電流で動作する増幅素子で、
スピーカーを直接ドライブすると大きなロスが発生してしまい効率的ではありません。
そこで、高インピーダンスの真空管増幅回路と低インピーダンスのスピーカーとの間に使用し、
インピーダンスが適正値となるようにする電子部品が出力トランスです。
出力トランスは鉄芯に銅線が巻いてあるという単純な構造で、戦前から実用化されている古い電子部品です。
その特性は良いとは言えませんし、とても高価です。良い特性を得るためには、大容量のトランスを使用したり、
高品位な鉄芯を使用する必要がありさらに高価なパーツとなってしまいます。現在では真空管アンプ以外で使用されることは稀です。
● OTL(アウトプット・トランス・レス)
高インピーダンスの真空管増幅回路を並列に多数使用しインピーダンスを下げて、
出力トランスを使用することなく直接スピーカーと接続する回路方式です。
出力トランスはあまり特性が良くありませんので、これを排除するために考え出されました。
真空管を多数使用する必要があるため出力トランスを使用したときよりも高価になってしまいます。
また、多数の真空管のバランスをとることが困難で故障が多いため現在ではほとんど使用されません。
● ヒーター回路
真空管は電子をカソードからプレートに飛ばし増幅を行っていますが、カソードが飛び出す際にはエネルギーを与えなければなりません。
そのエネルギーを熱という形で担うのがヒーター回路です。真空管は電極の中に明るい光を発している部分があります。ここがヒーターです。
ヒーターには2v~12v程度の低い電圧が用いられます。これは電池を使用していた時代の名残です。
● 電源効率が良いデジタルアンプ
オーディオアンプは電源をエネルギー源として動作しており、アナログアンプは電源電圧の範囲内の電圧の音楽信号が出力されます。
音楽信号は大きな音量の時も小さな音量の時もあります。
電源電圧は一定なのですから音量によって電源エネルギーの利用効率が変化します。
利用効率は最高でも50%程度です。残りの50%は熱になります。
デジタルアンプは音楽信号を高速でスイッチングして音楽信号に近似させることで動作しています。
デジタルアンプのスイッチングは供給している電源をON/OFFすることで行われますので電源の利用効率は80%以上になります。
近年、ノートパソコンやスマホ等のバッテリーを使用した機器が増え、電源の消費を抑える必要が増してきました。
デジタルアンプが普及した最も大きな理由はバッテリーを長持ちさせることができるからです。
● チップ化
最近ではチップ化の技術が進み、多くの電子回路がチップ化されています。
チップとは集積回路の俗称で、例えば、パワーアンプの増幅部をチップ化することで、
小型軽量で安価なパワーアンプを製作することができます。
アナログ式のパワーアンプチップでは、発熱が大きいため大出力のパワーアンプチップを実現できませんでしたが、
発熱が少ないデジタルパワーアンプの出現で大出力のパワーアンプチップが生産されるようになりました。
● 高周波カット用のコイルを直列に接続する必要があります
デジタルアンプは音楽信号を高速でスイッチングしており本来の音楽信号よりもはるかに高い周波数成分を含んでいます。
これは音楽再生には不要な上、歪が増大する原因となりますので高周波成分をコイルを使ってカットしなくてはなりません。
コイルは電線を巻いて作ります。いわば、延長されたケーブルと考えることができます。
多くのオーディオファンはスピーカーケーブルのロスやクオリティにまで細心の注意を払っているのに
スピーカー回路にコイルが直列に接続されることを良しと思わないでしょう。
● 古典管
1930年代以前に設計された古い真空管をそう呼ぶ事があります。
電話回線の増幅のために開発された101Dに始まり、ラジオ用のUX-112A 、電蓄に使用された45や2A3、
劇場用アンプに使用されたWE300B等、現在でも人気の真空管が多くあります。その多くは直熱管です。
現在多く使用されている傍熱管はカソードという電極をヒーターで熱する事で電子が飛び出し、電流が流れますが、
直熱管はカソードそのものがフィラメントになっていて発熱するタイプの真空管です。
直熱管は周辺回路が複雑になり、『ブーン』という音のハムノイズが多いので真空管としては少数派です。
古典管は高音質と言われ珍重されていますが、これは古典管には音響用として開発された真空管が多かったからです。
その後、音響専用の真空管は少なくなり他の用途に使用するための真空管が増えてきました。
もちろんこれらの真空管は音響機器に流用することが可能ですが、
純粋に音響用に設計されたのではないとのことから一段低く見られていました。
しかし、高音質の傍熱管もたくさんあり、懐古趣味によって直熱管がもてはやされているという意見もあります。
● A級、AB級、B級
パワーアンプの出力に使用される電力増幅回路において、
どの程度のアイドリング電流が流れているかによってA級、AB級、B級に分かれています。
A級は最大出力時と同じだけのアイドリング電流が常に流れている方式です。
そのため発熱は大きくのですが、電流が流れなくなることがないので歪みが少なく高音質と言われています。
B級は音楽信号があるときだけ電流が流れる方式で発熱は少ないのですが、歪は多いと言われています。
AB級はその中間で音楽信号が小音量の時はA級、大音量のときはB級で動作します。
歪、発熱ともに少なくバランスのとれた方式です。現代の多くのパワーアンプはAB級が使用されています。
● 正相 / 逆相
スピーカーとパワーアンプにはプラスとマイナスの表示がなされています。
通常はパワーアンプのプラスとスピーカーのプラスを、パワーアンプのマイナスとスピーカーのマイナスもまた接続します。
このように正しく左右のスピーカーが接続した状態を『位相は正相』と表現します。
もし右のスピーカーは正しく接続し、
左側のスピーカーだけをパワーアンプのマイナスとスピーカーのプラスのように逆向き接続した場合を『位相は逆相』と表現します。
正相で接続された場合、左右のスピーカーからの音圧は加算され音量が増加して聴こえますが、
逆相で接続されている場合は左右のスピーカーの音がお互いを打ち消し合い音量が低下して聴こえます。
ただし、位相は相対的なものであって絶対的なものではありません。
もし、左右両方のスピーカーがパワーアンプのマイナスとスピーカーのプラスのように逆向き接続ではあっても左右が揃っている場合には『正相』になります。
● ダンピング
現在ではスピーカーの『ドライブ能力が高い』=『ダンピングが効いている』という意味合いで使用されることも多いようですが、
本来の意味はパワーアンプから出力される音楽信号がスピーカーを忠実に動作させている状態を指します。
音楽信号において曲間の無音部分は『音がない』のではなく、『無音という音楽信号が再生されている』のです。
『音がない』ということであれば、アンプが接続されていない状態と同じです。
これではスピーカーのコーン紙は外部からの音圧で不要な振動をしてしまいます。
『無音という音楽信号が再生されている』ということであれば外乱によってスピーカーが動くことはなく
外部に雑音源があったとしても無音の状態を保持し続けます。
『ダンピングが効いている』状態とは、たとえパワーアンプの出力が無音であってもその無音の信号に忠実にスピーカーが動作し、
無音を続ける能力が高いということになります。
● 精度1%
抵抗の精度は種類によって異なります。
カーボン抵抗ではプラスマイナス5%、金属皮膜抵抗ではプラスマイナス1%が一般的ですが、もっと高精度なものもあります。
精度5%の抵抗はE12系列によって、精度1%の抵抗はE24系列によって製造されています。
E12系列というのは1.0オーム、1.2オーム、1.5オームのように12種類の抵抗値によって構成され、
E24系列は1.0オーム、1.1オーム、1.2オームのように24種類の抵抗値によって構成されています。
正確な抵抗値を必要とする回路ではE24系列の抵抗が使用され、
更に正確さを要求される場合は半固定抵抗のように製品が完成した後に調整可能な抵抗を用いることもあります。
実際の抵抗値は抵抗の精度だけに左右されるのではなく温度や経年変化によっても変化します。
とくにカーボン抵抗は温度に対する変化量が大きく、僅かな温度変化を問題視する場合は温度に対する変化量の少ない金属皮膜抵抗が用いられます。
ただし、精度と音質には直接の関係はありません。
僅かな抵抗値の変化も問題となるような回路に使用するのでなければ精度に神経質になる必要はありません。
● 容量は1wから20w
ここでいう容量とは熱容量です。抵抗は電流と両端の電圧の積の数値分の発熱があります。
例えば、10ミリアンペアの電流値で両端の電圧が50vの場合、0.01?50=0.5w(ワット)の発熱があります。
抵抗器に表示されている容量は、これ以上の発熱があると抵抗が破壊されるという数値であって、定常的に使用できるという数値ではありません。
0.5wの発熱がある場合は最低でも2倍の1wの抵抗を使用します。
抵抗の発熱は周囲の空気の還流によって冷却されますので、ケースの大きさや冷却ファンの有無、抵抗の取り付け方向によっても使用する容量が異なります。
空中に縦向きに設置されている場合と、プリント基板上に横向きに設置されている場合とでは温度の上昇は2倍以上異なりますので注意が必要です。
● 抵抗は計算値と実測値がほぼ同じですが、コンデンサーはなかなか思い通りになりません
精度が1%程度の抵抗は一般的で簡単に入手できますが、コンデンサーでは5%以上の精度のものを入手することは大変です。
電解コンデンサーに至っては、プラス100%・マイナス0%という精度が一般的です。
100マイクロファラッドのコンデンサーであれば200マイクロファラッドから100マイクロファラッドの間の容量・・・ということになります。
これは電解コンデンサーの主な用途が電顕の平滑用であるため容量が少ないのは問題ですが、多いのはOKというのがその理由です。
電解コンデンサーにもタイマー用と称する容量が正確なコンデンサーもありますが、これは特殊なものです。
現在では生産技術が向上し電解コンデンサーの精度も向上してきましたが、
市場に多く出回っている海外製の電解コンデンサーは未だ精度が低いものが多数あり注意が必要です。
● NFB回路や発振止め
NFB回路や発振止めには0.01マイクロファラッド以下の小容量のコンデンサーが使われます。
0.01マイクロファラッド程度の容量の場合フイルムコンデンサーまたはセラミックコンデンサーから選択することになります。
フイルムコンデンサーは超高域でインピーダンスが上昇し、コンデンサーとしての機能が低下する可能性があるので、
超高域でもインピーダンスが上昇しないセラミックコンデンサーを選択するのが一般的です。
● 高い周波数でインピーダンスが上昇するというコイルとしての特徴
フイルムコンデンサーは絶縁フイルムの両側に金属を蒸着していますが、フイルムの面積が大きくなるためフイルムを巻き小さく、使いやすくしています。
しかし、周波数が高くなると巻かれている部分がコイルとして動作し、
コイルの特徴である『周波数が高くなるほどインピーダンスが上昇する』が、
コンデンサーの特徴である『周波数が高くなるほどインピーダンスが低下する』を上回りコンデンサーとして機能しなくなります。
● リレー
日本語では継電器と表します。電気信号を受取り、接点を開閉させて次の回路に信号を送ることからリレーと言われています。
電磁石とスイッチで構成されています。初期のコンピューターでは主要な演算素子でした。
1941年ドイツで開発されたZuse Z3はリレーを2200ケ使用し、ドイツ航空機研究所で気流の研究に使用されました。
● FET(電界効果トランジスター)
1957年に開発されましたが当初は少し無理な使い方をするとすぐに壊れてしまうような半導体でした。
1970年代になると実用的なFETが生産されるようになり、価格もトランジスターよりも高価だったため、
『高品位なトランジスター』というような間違った認識で、オーディオアンプに広く使用されるようになりました。
特性が3極真空管に似ていると言われていることから、真空管に近い音がすると思われる方もあるかもしれませんが、
その音質は正に半導体の音質であり、真空管に近いとは言えません。
使用する回路に合わせてトランジスターとEFTを選択するべきで、どちらが高品位というものではありません。
● オペアンプ
Operational Amplifier、日本語では演算増幅器と呼ばれます。
1960年代以前にはアナログコンピューターの演算素子として使用されていました。
現在のコンピューターは2進数でデジタル化されていますが、
アナログコンピューターは3.6+2.4を計算する場合、3.6vの電圧の信号に2.4vの電圧を加えて6vを導き出していました。
この方式は大雑把な回答しか得られませんが、処理速度が速く、爆撃機の照準用等に使用されていました。
● 汎用IC
オーディオコンポーネントに使用されているICは、D/Aコンバーター等ほとんどが専用ICです。
汎用ICの機能は専用ICに組み込まれるようになり、現在は専用ICの補助的な機能のICとして残っています。
● ギャングエラー
ギャングエラーとはステレオのように多チャンネルでの再生時に、チャンネル間で音量差が発生する現象です。
オーディオコンポーネントでボリュームを調整する場合、音量はゼロにできなければなりません。
そのためにはボリュームノブを最小にしたときには信号線路が抵抗体から離れた状態である必要があります。
ボリュームを徐々に絞っていき、
ゼロになる直前の位置で信号線路が抵抗体から離れるタイミングを左右のチャンネルで完全に合わせることは困難です。
一方、固定抵抗をスイッチで切り替えているアッテネーターは
どんなに小音量に設定されていたとしてギャングエラーは発生しません。
● アッテネーターは段階的に
アッテネーターはノブを回転させると階段状に音量が変化しますが、その変化の度合い(ステップ)にはいくつかの種類があります。
最も多いのがdBステップです。
-6dBで1/2、-10dBで1/3、-14dB で1/5、-20dBで1/10のように、減衰量を数値で決定することができますので業務用での用途には便利なのですが、
ホームオーディオにおいてはそれ程必要な機能ではありません。
アッテネーターも最近ではヒトが自然に感じるステップであるAカーブに準拠したステップが使用されることがあります。
ムジカのパッシブアッテネーターCuculo-att2にはAカーブに準拠したステップが採用されています。
● 固定抵抗
可変抵抗に対して固定抵抗という表現をする場合があります。
可変抵抗はボリュームのように抵抗値を変化させる事ができる抵抗で、固定抵抗は常に一定の抵抗値である抵抗です。
これは機能の違いによる名称です。
固体抵抗(ソリッド抵抗)という抵抗がありますが、これはカーボン抵抗や金属皮膜抵抗といった抵抗の素材や構造による分類です。
固定抵抗とは意味が異なります。
● 電源トランス
電源トランスはアナログ電源を使用しているオーディオコンポーネントには100%搭載されていますが、その理由は2つあります。
1つは電源電圧です。オーディオコンポーネントに使用されている様々な回路はそれぞれ異なる電源電圧で動作しています。
電源トランスによってそれらの回路に最適な電圧に変換し、供給しています。
もうひとつの理由は感電防止です。
オーディオコンポーネントのケースを素手で触っても感電することはありませんが、
もし電源トランスがないと感電したり異常なノイズが重畳したりします。
これは電源トランスの絶縁機能によるもので、トランスは電気エネルギーを磁気エネルギーに変換し、電気エネルギーに再変換しています。
その仕組みによって100vの壁のコンセントとオーディオコンポーネントの筐体を絶縁することができるのです。
● スイッチング電源回路
スイッチング電源は大電力のエネルギーを小さな筐体で実現することができる電源回路です。
スイッチング電源回路が小型化できたのはトランスの小型化に成功したからです。
アナログ電源では商用電源の周波数である50Hzや60Hzでトランスを使用しますが、スイッチング電源では商用電源を数十KHzの電源に変換し、
その後トランスを使用します。トランスは周波数が高くなるほど小さく製作することが可能ですので、
アナログ電源で手のひらほどもあるトランスがスイッチング電源では数センチのごく小さなトランスに置き換えることが可能なのです。
● 真空管ラジオの出力トランスは200Hz程までしか再生しないような設計
当時のラジオの帯域は狭く低域は200Hz程度までしか再生できませんでした。
現代の高級真空管アンプが20Hzまで再生できることを考えると、再生周波数帯域は10倍もの広帯域です。
真空管アンプには20Hzまで使用できる大型の出力トランスが使用されていますが、
真空管ラジオで使用された200Hzまでの出力トランスは1/10のサイズで済ますことができます。
● シース(被覆)
導体同士、または導体が他の金属部分と接触しないように絶縁している部分です。
その材質は多くはビニールで、一部にはテフロンやゴム、布が使用されている場合もあります。
多くのケーブルでは複数の子ケーブルが束ねられて1本の親ケーブルとなっていますが、
子ケーブルの被覆をインナーシース、親ケーブルの被覆をアウターシースといいます。
シースは絶縁以外にも導体のわずかな振動を止める事で
伝送する音楽信号の歪を抑える役割もあります。
特に伝送する信号電圧が低いフォノケーブルやマイクケーブルではその効果が顕著です。
低品質なケーブルではシースを叩く等の振動を加えると
スピーカーから叩いた音が聞こえるものもあります。
● 0.75スケア
電線の導体部分の太さを表しています。
0.75スケアは導体の段面積が0.75平方ミリメートルを意味します。
電流が多く流れるケーブルほど太い導体が必要です。
ピンケーブルでは0.5~0.75スケア程度、
スピーカーケーブルや電源ケーブルでは
0.75~3.5スケア程度のケーブルが使用されます。
● 接触抵抗
伝送線路に端子を使用する場合、
端子と端子(または電線)の導体部分は広い面積で、そして適度な圧力で接触していないと、
大きなロスが発生します。この状態を接触抵抗が高い状態と表現します。
特に大電流が流れる電源回路やスピーカー回路に使用される端子は
低い接触抵抗の端子を選ぶ必要があります。
● 圧着端子
電線が最小限の損失で接続されるために導体部分の先端に使用される端子です。
圧着端子は銅の筒にケーブルの導体部分を挿入して
専用工具で押し潰す事で電線と端子がつながるのですが、
この際、電線と端子は金属ぼ分子レベルで結合された状態になっていると言われ、
非常に信頼性の高い端子と認識されています。
● ヒートシンク(放熱器)
パワーアンプに使用するパワートランジスターやパワーFET等の半導体は多くの出力を取り出すと発熱します。
半導体は熱に弱く、150度を超えると破壊されると言われています。
そのため放熱器を使用して熱を空気中に放出しなければなりません。
放熱器は表面積を増やして空気と接する面積を増やす必要があるので羽が生えているような形状のものが多いようです。
また、放熱器の隅々まで同じ温度に保たせるためアルミ材のように熱伝導率のよい材料を使用します。
● 塗装とメッキ
塗装は材料の表面に塗料を塗り固めたもの。メッキは材料の表面の物性を変化させたものです。
塗装には多くの色があり、最近では木目の塗装のように模様を描くことも可能です。
メッキは薄いのですが剥がれにくく、金色や銀色にすることができるため高級感ある仕上がりになります。
● 梨地加工(サンドブラスト)
嘗ては材料に高速で砂粒をぶつけて、細かなへこみをつけることによって艶消し状の仕上げを可能にする加工方法でした。
果物の梨のようなザラザラとした質感を表現することができるため梨地加工と言われています。
現在ではガラス粒や鉄粒等を使用したり、粒の大きさを調整することで、微妙な仕上がり具合を変化させることが可能になりました。
● ヘアライン加工
金属製のタワシのようなもので材料の表面に筋状の傷をつける加工方法です。
髪の毛に似ているところからヘアーライン加工と言われています。高級感があるためフロントパネル等に使用されます。
● ハンマートン
嘗ては薄い金属板を立体的に成型するため、金属板を金槌で叩き器を製作していました。
その際、金属の表面に無数のへこみが残るのですが、これを模様のように意図的に加工したものがハンマートンです。
● 分解能が高く、広範囲の周波数帯域が収録
音楽信号をデジタル化する場合、元の信号に対して忠実な波形を再現させるためには高分解能と広周波数帯域で近似させる必要があります。
高分解能とは波形の高さ方向(電圧)を細かく近似させることです。CDは16ビットですので2の16乗の分解能です。
つまり音楽信号の電圧を1/65536の細かさで近似させるということになります。
ハイレゾ音源は24ビットまたは32ビットですので、24ビットの場合、2の24乗の分解能です。
音楽信号の電圧を1/16777216の細かさで近似させているということになります。これは256倍の細かさです。
また、広周波数帯域とは波形の横方向(時間)を細かく近似させることです。CDは44.1KHzですので音楽の時間軸を1/44100秒の細かさで近似させています。
ハイレゾ音源は96KHzまたは192KHzですので、96KHzの場合時間を1/96000秒の細かさで近似させています。
約2.2倍の細かさです。
つまり、CDクオリティの16ビット44.1KHzと、ハイレゾ音源の24ビット96KHzを比較すると、
256×2.2=563ですのでハイレゾ音源はCDよりも563倍も源波形に近いということが言えます。
● 20KHz
ヒトの可聴周波数(聴くことができる周波数)は20Hz~20KHzといわれていますが、これは子供で測定した場合です。
よく60歳を過ぎると高い周波数が聴こえなくなるといわれますが、
これは嘘で、20歳くらいから徐々に高い周波数が聴こえなくなり、自身が自覚するのが60歳位ということだそうです。
さらに人によっての誤差もあります。
● 20Hz以下の超低域
ヒトの可聴周波数(聴くことができる周波数)は20Hz~20KHzといわれていますが、これは耳で聴くことができる周波数です。
太鼓の音が『腹にくる』といいますが、これは皮膚が超低域の空気の振動を感じているからです。
ヘッドホンで聴いた音はなぜか低域の迫力がないのもそのためだといわれています。
● 円盤型アナログレコード
レコードは記録メディアを意味しますのでそういった意味ではCDもカセットテープもUSBメモリーもレコードの一種ということになります。
円盤形のレコードをディスクレコードといいます。
1877年エジソンによって発明されたレコードは円筒状でしたが、その後、1887年にエミール・ベルリナーによって円盤状のレコードが発明されました。
円盤状レコードは大量に同じレコードを作ることが容易で、収納にも場所をとりません。
さらに、中央にレーベル貼ることができるため曲名をレコードに表示することができました。
また、両面を使用することで収録時間を2倍になる等多くのメリットがあるため現在まで円盤型レコードが主流となっています。
● ハウリング
レコードから再生された音はスピーカーから再生されリスナーの耳に届くと同時に
スピーカーと同じ部屋に設置されたレコードプレーヤーにも影響を与えます。
レコード盤から信号を得るためのカートリッジはレコード盤の溝に刻まれた振動を電気信号に変換しているのですから、
レコード盤から信号をピックアップするときに、
レコード盤に収録されている音楽信号がスピーカーを介して混入すると
特定の帯域の信号だけが2倍、3倍となり最終的には『ボ・ボ・ボ』という音楽信号よりも音圧の高いノイズになります。
これをハウリングといいます。
● バスレフポート
バスレフレックス型スピーカーにおいて低域を増強するための孔を指します。
主に100Hz以下の低域が再生されます。低域は高域程直進性がないため、バスレフポートはスピーカーシステムの裏側に設置されることもあります。
この場合バスレフポートと壁は50cm以上離して設置しないと超低域がこもった音になることがあります。
このような時はバスレフポートにスポンジやタオルを入れてポートの太さを調節することで低域の量感を加減することも可能です。
● サラウンド
サラウンドとは3ケ以上のスピーカーをリスナーの周囲に配置し、
前面だけでなく後面からも再生されるようにすることで2チャンネルでは体験できない音場を創出するもの・・・と考えられていました。
しかし、フロントの2チャンネルだけでも細かな設置・調整を行う必要があるのに、
スピーカーが4本、6本と増えていって十分な設置・調整ができるのか疑問です。
設置・調整が適切でないと左右2チャンネルのステレオよりもサラウンドにした方が音場感を低下させることにも。
最近では、多チャンネルは流行らなくなり、
左右2チャンネルのステレオを正確に設置・調整することで
サラウンドと同等の音場をサラウンドをはるかに上回るクオリティで再生することができると考えられています。
そのため、サラウンドはピュアオーディオマニアからは一段低く見られるというようなこともあるようです。
● 米国ドルビー社が映画用に開発した音響システム
現在の最新の規格はDOLBY ATMOSで、64個のスピーカーを使用し、128chのオーディオトラックを、3次元的に再生するというものです。
この場合、スピーカーの設置・調整はドルビー社によって厳密に管理されており、そのクオリティは民生用のサラウンドとは次元の違うシステムです。
● SQステレオやCD -4
1970年代に音場感を改善する方法としてオーディオメーカーやレコード会社が初期のサラウンドを発表しましたが、
費用対効果が低くすぐに廃れてしまいました。
● 4Kの映像
Blu-Rayに使用されているフルハイビジョン(1080i)の4倍の画素数をもつ映像の規格。
映画等の4096×2160と、テレビ等の3840×2160の規格があります。
現在ではYouTubu等の動画配信サイトでも対応しています。
ただし、4Kを高精度な映像を見るためにはすべての機器やケーブル等が4Kに対応している必要があります。
● カセットテープ
カセットテープにはエルカセットやマイクロカセット等がありますが、一般にカセットテープといえば、コンパクトカセットを指します。
現在では民生機としては録音可能な唯一のアナログメディアです。1960年代にオランダのフィリップスによって開発されました。
その後特許が公開され、世界中で生産されるようになりました。
1970年代中頃にはラジカセが出現し、1979年にウォークマンが発売されると家庭にまで広く普及しました。
1992年にMDレコーダーが発売されるまで、ホームオーディオ用の他、カーオーディオ用、ウォークマン用、語学学習用として広く使われていました。
● テープヘッド
磁気テープを録音再生するためにテープに接して信号のやり取りを行うための電子パーツです。
一般的なラジカセに使用するようなものから、
高級品であるパーマロイを使用したものやアモルファス合金のような高品位なテープヘッドも流通していました。
テープデッキの要のひとつであり、高品位なテープヘッドが使用されたカセットデッキは高級機とされていました。
● ノーマルテープ
一般的なカセットテープ。高域特性があまり良くなく、一般的には10~15KHz程度のものが多かったように思います。
● クロムテープ
1970年頃ドイツのBASF社が開発した高性能テープ。二酸化クロムが使用されていたためクロムテープと呼ばれていました。
テープヒスというテープ特有の高域のノイズが少なく、高域特性が優れていたため音楽用に使用されました。
● メタルテープ
1978年日本のScotchから発売された超高性能テープ。テープヒスは少なく、高域特性も20KHzまで伸びていました。
また、録音レンジが広くダイナミックな音質でした。
● ASIO
Audio Stream Input Outputの略で、Windows向けオーディオデバイスのドライバーの一種です。
OSのサウンドに関するアクセサリーソフトをバイパスすることできるので、
データ送信から音声が出力されるまでの遅延時間を1/10以下に短縮することができます。
さらに、音質の向上にもつながると言われています。
● WASAPI
Windows Audio Session APIの略で、
Windowsに接続されたUSB-DAC等のオーディオデバイスと音楽を再生するためのソフトウェアとの繋がりを管理する仕組みです。
ウインドウズミキサー等をバイパスさせることで高音質化させることができます。
● DSD
Direct Stream Digitalの略で、音楽をデジタル化(ファイル化)する方式の1つです。。
一般的なマルチビットではなく、1bitが使用されています。
マルチビットとは、例えば8ビットの場合、音楽信号の瞬間瞬間に音楽信号の電圧を2の8乗=256に分割し音楽信号の波形を近似させますが、
1bitでは音楽信号の波形が上向きか下向きかを記録する事で近似させています。
● FLAC
Free Lossless Audio Codecの略で、音楽信号を圧縮してファイル化するための形式のひとつです。
可逆圧縮(圧縮した音楽信号を再び元に戻したとき100%同じ信号になる) です。
ハイレゾ音源を使用する際の標準的なファイル形式です。
● TTA
The True Audio の略で、音楽信号を圧縮してファイル化するための形式のひとつ。
可逆圧縮です。高圧縮が可能で、高速にファイルの処理が特徴ではありますが、パソコンのマシンパワーが多く必要であるためあまり普及していません。
● MP3
MPEG-1 Audio Layer-3の略で、音楽信号を圧縮してファイル化するための形式のひとつです。
非可逆圧縮(圧縮した音楽信号を再び元に戻したとき同じ信号にはならない) ですが、圧縮率が高いのが特徴です。
ハイレゾ音源でない音源では最も多く使用されている標準的なファイル形式です。
● AAC
Advanced Audio Codingの略で、音楽信号を圧縮してファイル化するための形式のひとつです。 非可逆圧縮です。
96KHzのハイレゾ音源にも対応していますが、ハイレゾ音源で使用されていることはあまりありません。
1997年にMP3の後継フォーマットとして策定されました。同程度のビットレートであればMP3より高い音声品質を実現していますがあまり普及してはいません。
● ALAC
Apple Lossless Audio Codecの略で、音楽信号を圧縮してファイル化するための形式のひとつです。
可逆圧縮(圧縮した音楽信号を再び元に戻したとき100%同じ信号になる) です。米アップル社が開発した形式で、iPhone等に使用されています。
● Ogg Vorbis
音楽信号を圧縮してファイル化するための形式のひとつです。 非可逆圧縮です。
同程度のビットレートであればMP3より高い音声品質を実現しています。
特に低ビットレートではその性能は高く評価されています。
また、MP3にはライセンス料が必要ですが、Ogg Vorbisはロイヤリティフリーなのでゲーム等に利用されています。
● WavPack
音楽信号を圧縮してファイル化するための形式のひとつです。
可逆圧縮です。量子化ビットは32bitまで対応。サンプリング周波数は192kHz のPCMの他DSDもサポートしています。
● Wave
RIFF waveform Audio Formatの略で、音楽信号を圧縮してファイル化するための形式のひとつです。
WAVといわれることもありますが同じものです。 音楽信号をそのままファイル化したもので圧縮されていません。
マイクロソフトとIBMが開発しウインドウズに使用されてきました。
低速度のPCで高音質を得る事ができますが、FLACが開発された現在ではあまり意味のない形式です。
● AIFF
Audio Interchange File Formatの略で、音楽信号を圧縮してファイル化するための形式のひとつです。
音楽信号をそのままファイル化したもので圧縮されていません。
1988年にアップル社が開発したもので、同社のmacOSやiOSなどで標準的に使用されていました。
WindowsにおけるWAV形式に近いものです。
● APE
音声データ圧縮ツールのMonkey's Audioで圧縮されたファイルです。
可逆圧縮(圧縮した音楽信号を再び元に戻したとき100%同じ信号になる) です。
他の可逆圧縮の形式よりも圧縮率が高くファイルサイズが小さくなります。現在ではあまり使用されていません。
● WMA
Windows Media Audioの略で、マイクロソフトによって開発された音楽信号を圧縮してファイル化するための形式のひとつです。
非可逆圧縮(圧縮した音楽信号を再び元に戻したとき100%同じ信号にならない) です。
現在ではあまり使用されていません。
● Opus
IETF によって開発された音楽信号を圧縮してファイル化するための形式のひとつです。
非可逆圧縮です。ロイヤリティフリーの形式です。あまり使用されていません。