新・オーディオ入門 9
『オーディオはよくわからないけど良い音で音楽を聴きたい』、『オーディオ歴は長いけどこれは知らなかった!』というお話を聴くことがあります。 新オーディオ入門はオーディオの基礎についてエンジニアの視点から初心者の方にも判りやすく解説していくものです。 タイトルは私が10代の時に愛読した『オーディオ入門』から拝借しました。 私がオーディオに携わることになったきっかけの本です。 とても判りやすく説明されていて、手元に置いて辞書のように使っていました。 『新・オーディオ入門』はその現代版となれるよう書き進めたいと思います。
● 型名にペットネーム
一般的に製品名と言われているものはムジカでは『品名』と『型名』として区別しています。
品名は『パワーアンプ』『プリメインアンプ』等の名称で、型名は『pow64』『int64』といったアルファベットと数字の組み合わせが一般的です。
型名にアルファベットと数字がよく使用されるのは組み合わせが無限にあるという点と、
流通において標準化されているPOS(ポス)に登録しやすいという点が大きいと思います。
ムジカでは『型名』に『Raicho7-pri』や『Cuculo-ps』といったペットネーム(愛称)が使われている製品がたくさんあります。
ペットネームは無機質な文字の羅列とは異なり、製品に対する親近感を感じたり、型名を覚えやすいといったメリットがあります。
● 型名は小文字
海外の製品の型名では見かけることもありますが、ムジカの型名には英数字では大文字は使用せず、できるだけ小文字で表記しています。
これはムジカのコンパクトなオーディオコンポーネントを現しています。
さらに、『A-100』のような型名ではインターネットで検索を行った場合多くの製品がヒットしてしまうので、他社との区別を図るためです。
● 型名『Raicho(雷鳥)』について
Raichoはムジカのフラグシップモデルに使用され、初代のRaichoから、現在のRaicho7 / Raicho7miniまで7世代にわたって進化し続けています。
ムジカのアンプ類にはすべて鳥の名前が付けられており、雷鳥はムジカの所在地である岐阜県の『県の鳥』の名をいただきました。
本来であればRaichouとなるのですが、海外での販売時、発音が難しいとの理由でRaicho(ライチョー)としています。
初代~第3代のロゴは漢字で『雷鳥』とデザインされていましたが、
ヨーロッパのディストリビューターから、日本的なひらがなにしてほしいとの提案があり、
Raicho5からはひらがなで『らいちょう』と変更されています。
● 型名『Airone(アイローネ)』について
Airone(アイローネ)はラテン語でシラサギを意味します。
Aironeシリーズは2010年から始まった60シリーズと Raicho3を統合し、
最新のハイレゾ音源に対応するために新たに設計されたシリーズです。真っ白な羽のように透明感のある音を目指しました。
シラサギはこの辺りではとてもポピュラーな鳥で、水を張った田に飛来する様は米作が盛んな美濃(岐阜県南部)ではとても身近な風景です。
● 型名『Cuculo(ククーロ)』について
Cuculo(ククーロ)はイタリア語でカッコウを意味します。
ベートーヴェンの交響曲第6番『田園』第2楽章終盤に登場するクラリネットによるカッコウをモチーフにしました。
この小節は華やかではありませんが、田園で最も印象的な小節です。
Cuculoシリーズはオーディオシステムの中枢をなすものではなく周辺機器のシリーズです。
周辺機器ではありますが主となるコンポーネントに負けないクオリティを発揮するという意味があります。
● 型名『Ver(ウェール)』について
Ver(ウェール)はラテン語で春を意味します。2021年にハイレゾに対応したスーパーツィーターとして発売され、
2022年にはVer Duo(ウェール・デュオ)、2024年にはVer2(ウェール2)と進化を遂げてきました。
2021年は景気の低迷やコロナウイルスによって閉塞感に苛まれた年でした。Ver(ウェール)は世界に春がやってくるようにと名付けられました。
● その他の型名について
Falco(ファルコ)はイタリア語で鷹を意味するスピーカースタンド型サブウーハー、
Canarino(カナリーノ)はイタリア語でカナリアを意味するスーパーツィーターの型名です。
これらは鳴声の音程から名付けられました。Picchio(ピッキオ)は、イタリア語でキツツキを意味するスピーカースタンドです。
キツツキは巣となる木の幹に穴を開け、2つの出入り口を作ります。Picchioはデザイン上2つのホールがあるため名付けられました。
ムジカには良い音を長く楽しめる他社にはない3つのサービスがあります。
● カスタマイズ
『カスタマイズ』はライフスタイルに最適化するために高音質化や使いやすさを向上させるための有償サービスです。
自動車を購入するときは、ボディーカラーやエンジンの排気量等をいくつかの選択肢から選ぶことができます。
オーディオではどうでしょうか?ムジカでは30以上のカスタマイズが一覧表から選択可能です。
例えば、プリアンプの標準入力はRCAジャック(ライン入力)ですが、
レコード用のイコライザー回路、 バランス回路、USB-DAC、光ケーブル入力、Bluetooth等に変更することが可能です。
また、高品位RCAジャック、コンデンサー、抵抗等に変更することも可能です。カスタマイズは購入時はもちろん、購入後も可能です。
● ヴァージョンアップ
『ヴァージョンアップ』は新技術や新しいパーツが世に出た際に行われます。
最近ではスーパーツィーターVerがVer2にヴァージョンアップされ、上限周波数が60KHzから75KHzへと広帯域化されました。
ムジカの製品は開発時からできるだけヴァージョンアップ可能な設計を心がけています。
● 乗換キャンペーン
ムジカ製品を購入いただいたお客様は、カスタマイズとヴァージョンアップでその時々の最新モデルに引けを取らない高音質をお楽しみいただけますが、
さらに年月が経過すると、カスタマイズやヴァージョンアップでは対応できなくなります。
また、オーディオコンポーネントが家電製品である以上、故障やメンテナンスが必要な時期もやってきます。
そういったときにご利用いただくサービスが新製品の発売時に行う『乗換キャンペーン』です。
ご愛用のムジカ製品をお返しいただくと新製品を割引価格で購入できるというものです。
お返しいただく製品は故障していてもかまいません。
プリメインアンプからセパレートアンプへの乗換もOK。キャンペーンを活用して上級モデルへグレードアップ可能です。
ムジカ製品は他社にはない独特のこだわりがあります。いずれも限られたコストの中で高音質化するための手法です。
● コンポーネントの細分化
ムジカのオーディオコンポーネントの機能はシンプルで、機能ごとに別にコンポーネントを発売しています。
Cuculo(ククーロ)シリーズでは、フォノアンプ 、モノラルパワーアンプ 、パッシブアッテネーター、真空管バッファー、強化電源、DAコンバーター等の
単体の製品を発売しています。お客様によって必要な機能は異なります。
使用しない機能は購入する必要はありませんので、そのコストをグレードアップにまわすということも可能です。
限られたコストでハイクオリティな機能をもつオーディオコンポーネントを構築することができます。
● アナログへのこだわり
現在ではアナログレコードを除いてオーディオファンが音楽を楽しむのは大半がデジタル音源です。
デジタル音源は高音質であるから普及したのではなく、その利便性によるものが大きいと思われます。
しかし、昨今ハイレゾ音源を聴いていると音質は拮抗するところまできたと感じることもあります。
ムジカは開発時にはSN比や歪感はデジタル音源でチェックをしますが、製品の最終的な可否は音楽を聴いて感動するどうかをポイントにしています。
ムジカの製品最終的な音決めにはアナログ音源が使用されています。
● 外部電源の優位性
ムジカのオーディオコンポーネントは、ハーフサイズ以下の小型モデルは外部電源、大型のモデルは電源内蔵になっています。
小型のオーディオコンポーネントにとってノイズ源でもある電源回路と増幅回路を同居させることは困難です。
そのため電源回路をアダプター型とし、増幅回路から離れた場所に設置することによってSN比や歪率を向上させ高音質化を実現しています。
● イベントと勉強会
ムジカでは毎月1~2回のイベントまたは勉強会を行っています。。これらはムジカが独自に企画運営しています。
イベントは新製品発表会やレコードコンサート等音楽やオーディオを楽しむ企画や、
勉強会のようにオーディオに関する知識を高めたりするもの、簡単なオーディオコンポーネントの製作会等も行っています。
特に好評なのが勉強会です。現役のエンジニアが講師となり、
事前にウェブサイトやブログに告知したテーマで、オーディオや電子回路についてを
オーディオコンポーネントを再生し比較試聴しながら1時間半程度講義します。
基本は無料ですが、製作を行う場合は実費をいただくこともあります。
● 音響機器メーカーの社会貢献
ムジカは音響機器メーカーならではの社会貢献活動を行っています。
往年の名曲をアナログレコードでお楽しみ頂く『出張レコードコンサート』はイベント会場に音響機材持参で出かけて行き、
曲の解説を行いながらレコードの音をお楽しみ頂くイベントです。
また、毎年秋には『お月見コンサート』として大垣市のソフトピアジャパン水上ステージで無料のコンサートを企画運営しています。
このコンサートはクラシック、ジャズ、ポップスと多くのジャンルの音楽をその年のテーマに沿って
プロの演奏家に演奏して頂くもので、毎年数百人のお客様が来場される大規模なイベントです。
これまでに20回以上行っています。
● ユーザーとの交流
オーディオは1人で音楽を楽しむ趣味ではありますが、時には同じ趣味を持つ仲間と語り合うのも楽しいものです。
ムジカでは年末年始やゴールデンウィーク等に『オーディオ居酒屋』を開催しています。
参加費は500円で当社で用意したお酒とお食事を頂きながら
ログハウスでオーディオや音楽の話で楽しい時間を過ごすイベントです。
1ケ月程度前にウェブサイトやブログで参加者を募集します。初めての方もお気軽にお越しください。
ここではその他のムジカの取り組みの一部をご紹介します。
● 独立系メーカーならではの自由度の高い動き
ムジカは既存のどのオーディオグループにも属さない独立系のメーカーです。
ムジカでは現在、月産50台~200台の生産体制を維持しています。
月産数台というメーカーであれば、独立系のメーカーはありますが、
ある程度の生産能力をもつ独立系のメーカーというのは少ないと思います。
大手メーカーや大手に関連するメーカーは色々なしがらみが多く、意思決定にも時間がかかります。
ムジカでは先日2種のグラフィックイコライザーを新製品として発売しましたが、
1980~90年代のグラフィックイコライザーの盛衰を経験してきた世代がメーカーを運営に多くいると慎重な意見が多く出ることでしょう。
また、ムジカは3種のスーパーツィーターを販売していますが、系列にスピーカー製造部門があればまず反対にあう製品だと思います。
ムジカでは面白そうなものはどんどん製品化していこうという社風です。
大手メーカーが良い製品を開発してもしがらみによって製品化できないというのは良く聴く話で本当に残念です。
● 積極的なOEM
ムジカが他の企業に先行している技術はアナログ増幅回路技術とノイズ対策関連技術、高周波関連技術です。
こういった技術を生かし、ムジカでは他の企業のOEM生産を行うことがあります。
OEMとは相手先ブランドによる生産を意味します。
A社から電子機器の開発・設計・生産の依頼があれば、ムジカで開発・設計・生産を担当し、
A社のロゴを印刷しA社が販売を担当します。
OEM生産では、ムジカが開発・設計・生産を行ったことを公表する場合としない場合があります。
公表している例としては、業務用音響機器としてFOOL'S GOLD社の電源関連機器の開発・設計・生産を行っており
多くのスタジオやコンサート会場で使用されています。
サカナクションのツアーにはムジカが開発・設計・生産を行った機器が使用されている画像も公開されています。
ここではその他のムジカの取り組みの一部をご紹介します。
● 学生向け見学会と芸術鑑賞会の企画運営
児童から大学生までを対象にオーディオコンポーネントの製作過程の見学会を行っています。
オーディオコンポーネントから音が再生される仕組みを判りやすく解説する他、懐かしいアナログレコードや最新のPCオーディオ、
ホームシアター等を体験して頂きます。これらは学校からの依頼によって不定期に行われています。
見学をご希望の学校関係者はお問い合わせフォームから
お問い合わせください。
また、小学校・中学校で音楽文化について学ぶ芸術鑑賞会を企画運営しています。
クラッシクだけではなくJAZZや洋楽の芸術鑑賞会も企画しています。
● ラジオ番組 FM GIFU『musica style』
FM GIFU(80.0MHz)でラジオ番組『ムジカスタイル』を放送しています。2008年に放送を開始し、800回以上放送し、現在も続いています。
FM GIFUは岐阜県全域と愛知県西部(名古屋)が聴取エリアですが、スマホやパソコンでradiko(ラジコ) にアクセスすると全国で聴取可能です。
番組ではオーディオに関する話題だけでなく、ラジオではあまり取り上げられることのないクラシックを判りやすく解説したり、
若いミュージシャンJAZZミュージシャンをゲストにトークをする等『男の趣味・音楽』をテーマに毎週放送しています。
● ブログ
2012年8月15日にスタートしたムジカ公式ブログはgooブログを媒体として、イベント情報、オーディオに関する豆知識、新製品情報等を毎日発信しています。
記事数は4000を超え、トータルアクセス数は600万PVを突破しました。
オーディオに関する記事だけでなく、毎年3~4月は地元大垣市上石津町一之瀬地区に400本以上ある桜の開花状況を画像付きで毎日発信しています。
また、6月にはホタルの発生状況も発信しています。また、2023年からはnoteでも『新・オーディオ入門』の記事を発信しています。
ここではその他のムジカの取り組みの一部をご紹介します。
● モデルハウスの運営
ムジカではオーディオコンポーネントの製造以外にも音響用防音ログハウスの施工も行っています。
ログハウスはJAZZの名門レーベル・ブルーノートのレコーディングスタジオにも使用されており音響特性が良いことで知られています。
壁は北欧産レッドパインの無垢材で60mm厚、床は3層構造で40mm厚、窓は2重ガラスです。
約40dB(1/100)の遮音性を実現しています。
モデルハウスは7.5畳と12.5畳の2種を見学していただくことが可能で、12.5畳のモデルハウスにはムジカ製オーディオコンポーネントを設置し、
ハイレゾ音源やアナログレコードをお聴きいただいたり、ホームシアターを体験していただけるようになっています。
また、ムジカのモデルハウスは地域の防災拠点としても利用されています。ログハウスは外壁がすべて構造体のため地震に強く安全です。
ムジカは上石津アマチュア無線クラブと協力し、災害時や停電時の地域の通信手段を確保するためバッテリーで動作する無線機を3台常備しています。
● 他社製品の修理
製造メーカーが廃業等で修理が受けられない他社製オーディオアンプの修理をおこなっています。
こういった修理は回路図や仕様書等の基本的な資料すらない場合がほとんどで、
こういった資料を作成するところからのスタートとなりますので修理費用は自社製品よりもどうしても割高になってしまいますが、
想い出のアンプを蘇らせたいというお客様や、古い真空管アンプをお使いのお客様から多くのご相談を頂いております。
● ミュージシャンへの支援
ムジカではクラシックやJAZZのミュージシャンへの支援を行っています。
コンサートの企画運営を行ったり、ミュージシャンにイベントへの出演を紹介しています。
また、放送局と協力し、ミュージシャンに放送に出演していただくような活動も行っています。
オーディオファンにはライフスタイル、音楽のジャンルや嗜好によって多くの選択肢があります。
これらを汎用性のある一般的なオーディオコンポーネントだけで再生することは困難で、
独特なオーディオコンポーネントを使用し音楽を楽しむファンもたくさん存在します。
どのような選択肢にも楽しみ方はありますし、複数の選択肢を実現するために複数のオーディオシステムを所有するということも多々あります。
ここではライフスタイル、音楽のジャンルや嗜好に合致したオーディオについて取り上げてみたいと思います。
今回はヘッドホンオーディオです。かつては深夜等でスピーカーからの再生が困難な場合にヘッドホンが使用されていましたが、
現代ではスマホや携帯用ミュージックプレーヤーが普及し、
ヘッドホンでの音楽再生がオーディオの主たる楽しみ方とという方も増えました。
ヘッドホンは微小な音もきちんと聴くことができ、歪も少なく、部屋の音響特性に左右されません。
近年ヘッドホンの種類は爆発的に増え、安価で高音質なヘッドホンもたくさん出回るようになりました。
現在ヘッドホンで音楽を楽しむ環境はこれまでになく恵まれている状態です。
反面、多くのオーディオファンがヘッドホンでの再生はを副次的な方法としか考えていません。
その理由は超低域にあります。
100Hz以下の超低域をヘッドホンで再生するととうしても迫力に欠けます。
大太鼓の音は『腹にくる』といいますが、100Hz以下の超低域は耳で感じ取るのに加えて、空気の振動として皮膚でも感じています。
ヘッドホンにはこの部分がないため、ダイナミックな音の再生は苦手で、
バスドラやベース、オルガンといった超低域を再生する楽器にリアリティが欠けて聴こえるのです。
この現象の対策は困難で、トーンコントロール等で超低域を増強してもあまり効果はなく、
一部の映画館などで使用されているボディソニックを組み合わせる方法もありますが、
聴取位置が固定されてしまいます。
『オーディオの魅力は低域』と考える方も多く、オーディオファンにヘッドホンが普及しない原因となっています。
オーディオファンの多くの方がヴィンテージオーディオにも興味をお持ちだと思います。
若い頃、購入することができなかった憧れのオーディオコンポーネントは誰しもあると思いますし、
オーディオ誌やネットの情報ではヴィンテージオーディオの素晴らしさが強調されている記事もあります。
これからヴィンテージオーディオをはじめようという方にぜひ知っておいて頂きたいのは、
ヴィンテージオーディオはクラシックカーのようなものだということです。
クラシックカーはどう頑張っても最新の車の性能を上回ることはありません。
維持費が高く、信頼性は低くなります。
しかし、クラシックカーを所有されている方はそれ以上の何だかの魅力を感じているということでしょう。
ヴィンテージオーディオも同じです。ヴィンテージオーディオは高性能でも高音質でもありません。
コストは最新のオーディオコンポーネントの10倍以上するでしょう。
また、修理やメンテナンスも必要です。それでもヴィンテージオーディオ・オーナーはその音が『好き』なのです。
音が良い悪いと好き嫌いは違います。
ヴィンテージオーディオ・オーナーは実は最新のオーディオセットを所有されている方が多く、普段はそちらで聴くと・・・。
若い頃、購入することができなかった憧れのオーディオコンポーネントと最新のコンポーネントの音質を冷静に比較試聴してから購入していただきたいと思います。
また、ヴィンテージオーディオはメンテナンスにも注意が必要です。
アメリカの老舗オーディオメーカーのリペアマンから聴いたのですが、
古いアンプを修理すると、音質が変わったとクレームになることがあるそうです。
劣化している電子パーツを新品に取り換えれば当然音質は変わります。
しかし、それはアンプが発売された頃の音質に近づいただけなのであって、それがアンプ本来の音なのです。
もし、現状の音が『好きだ』という場合は、メーカーによる正規の修理を行うことは難しいかもしれません。
ヴィンテージオーディオはとても興味深い趣味ではありますが、
ヴィンテージオーディオを所有するということは文化財を保護しているというような感覚が必要なのかもしれません。
私は現在ではオーディオメーカーのエンジニアですが、
もう40年以上前の学生時代はスピーカーやアンプを自作してオーディオを楽しんでいました。
当時はスピーカーユニットが多くのメーカーから発売されており、本格的なアンプのキットもありました。
また、ジャンクといって壊れたオーディオコンポーネントも売られていましたので部品を取り出し再利用したものです。
自作オーディオは製作の過程が面白く、出来上がったオーディオコンポーネントから音楽を再生するのが楽しく、
改善点を見つけて改良することで技術レベルが上がっていきます。当時多くの方が自作に挑戦していました。
最近では自作オーディオを取り巻く環境は年々悪化しています。
自作のためのパーツを生産していたパーツメーカーの多くが撤退しました。
国産のパーツは極わずかですので、海外から輸入することになるのですが、
そのクオリティや管理状態は国産とは比べるべくもなくメールを何度もやり取りをしてやっと正常なパーツを手に入れるということが頻繁に発生します。
また、パーツが高価になりました。40年前でしたらメーカー品は高価で、自作の方が明らかに安価でしたが、
現在では大量生産によってメーカー品は安価になり、パーツの生産減によって、
自作してみたらメーカー品以上のコストがかかったということも珍しくありません。
また、デジタルオーディオ全盛になり、専用ICやマイクロコンピューターを使用したオーディオコンポーネントが多くなりました。
こういったものを自作するのはかなり大変です。
また、オーディオメーカーは多くの時間と開発費をかけ、測定器と無響室等の設備をふんだんに使用し開発を行っています。
私が個人的に休日にオーディオコンポーネントをコツコツ自作してもメーカーで開発したもの以上の音質が得られるとは思えません。
昨今、多くの新素材が開発されホームセンター等でも入手可能になりました。
インシュレーターやスピーカースタンド等のオーディオアクセサリーの自作は興味深い分野です。
ホームシアターという言い方もありますが、最近ではそいった表現をする方は少ないのではないでしょうか。
嘗ては大画面で映画を観るためのもので、音のクオリティはあまり高くはありませんでした。
近年ではミュージックビデオを楽しむ方が増え、音のクオリティが問題視されるようになってきています。
以前は5つの小型スピーカーとサブウーファーでリスナーを囲むように設置する5.1チャンネルが主流でしましたが、
最近ではフロント2本のスピーカーだけで2チャンネル再生されることが多いように思います。
最近のスピーカーは音場の再生能力が高く、
正確な配置を行い、スピーカーの向きや高さを正しくセッティングすれば
5.1チャンネルにも負けないサウンドステージを作り出すことが可能です。
また、5.1チャンネルでは6本ものスピーカーを使用しますので1本あたりのクオリティーはそれほど高いものは使用されません。
その点、2チャンネル再生ではコストを2本のスピーカーに集中させる事ができ、
ハイクオリティなトールボーイ型スピーカーが使用されることが多くなってきています。
こういったスピーカーは十分な低域が確保できるためサブウーファーも不要です。
さらにはAVアンプも不要となり、高品位なピュアオーディオ用のアンプを使用することができるようになります。
近年はHDMIでの接続が普及し、簡単にハイレゾ再生ができるようになり音のクオリティは一気に上昇しました。
現在はオーディオ&ヴィジュアルのコンポーネントは過渡期かもしれません。
50インチを超える大型ディスプレイが安価に入手できるようになり、ディスプレーの軽量化で壁掛けも現実的になってきました。
YouTubeでも一部の動画は4Kで配信されており無料で楽しむことができます。
ここ数年で4K&ハイレゾの映像はさらに増えていくと思われます。
一部では、安価で使いやすい4K&ハイレゾ用コンポーネントも発売されてはじめました。
この分野は数年で様変わりする可能性が高いと思います。
マルチアンプとは、スピーカーをドライブする方式のひとつです。
通常、1組(右チャンネル、左チャンネル)のスピーカーは1台のステレオパワーアンプのみでドライブしますが、
マルチアンプでは複数のステレオパワーアンプを使用します。(2WAYであれば2台、3WAYであれば3台)
スピーカーケーブルで音が変わると言われます。
パワーアンプとスピーカーを結ぶ回路は大電流が流れるため、
そこに使用しているスピーカーケーブルのわずかなロスによって音質が劣化すると考えられます。
そこでパワーアンプをスピーカーの側に設置し、少しでもロスを減らす工夫をする方法をとる場合もあります。
ところでスピーカーシステムには高域と低域というように帯域を分割するネットワークと呼ばれる回路が内蔵されています。
よくよく考えると、スピーカーケーブルは銅線ですが、ネットワークはコイルや抵抗、コンデンサーによって構成されており、
ロスはスピーカーケーブルの何十倍もあります。
もし、ネットワークを無くすことができれば劇的に高音質になるのではないか・・・というのがマルチアンプの発想です。
マルチアンプには他にもメリットがあります。
スピーカーに内蔵されたネットワークを微調整すれば好みの音質に近づけることが可能です。
しかし、実際に行うためにはコイルを少しづつ巻いたりほどいたりいった難易度の高い作業が必要で、
さらにこの作業は時間がかかるため瞬時の比較は困難です。
その点、チャンデバ(チャンネルデバイダー)を使用するマルチアンプでは調整はツマミでを回すだけで簡単にできてしまいます。
マルチアンプにはデメリットもあります。
パワーアンプが複数必要ですし、チャンデバやケーブル類も余分に必要となり多くのコストが必要です。
また、市販スピーカーではネットワークをパスできる機能を持つスピーカーは現在はほとんどありません。
スピーカーを自作するか、市販のスピーカーを改造しなくてはなりません。
かなり難易度の高いマルチアンプ。ライフワークとして取り組むくらいの覚悟が必要ですが、その効果は絶大です。
アナログレコードの録音技術が大きく進歩したのは1940年代後半。
1948年にはLPレコードが発売されます。1940年代後半から1960年代前半はSPレコードとLPレコードが混在し、
1960年代ステレオ録音が普及してSPレコードが消滅しました。
1940年代後半から1960年代前半は高音質のモノラル録音盤が数多く発売されています。
また、この時期はクラシックであれば、フルトヴェングラーやワルター、トスカニーニ、JAZZのブルーノートの録音等、
モノラルの名盤が多数発売された時代でもあります。
これらの録音は音場感や周波数特性では現代の録音に一歩譲るものの、再生時の工夫次第でかはなり楽しむことが可能です。
モノラルレコードの再生ではモノラル専用カートリッジの使用をおすすめします。
アナログレコードは1本の溝で右チャンネル、左チャンネルの2つの信号が録音されています。
ステレオ録音では溝の横方向と縦方向の2方向に録音されていますが、モノラル録音では横方向のみです。
レコードを再生すると『プチプチ』というスクラッチノイズが発生しますが、このノイズは溝の縦方向のキズが原因であることが多く、
モノラル専用カートリッジで再生するとスクラッチノイズは激減します。
モノラルカートリッジは生産量が少なく、高価なものが多い中で米国GRADO社ME+ Mono ¥28,160(税込)が比較的安価でおすすめです。
モノラル再生では古いスピーカーを使用される方が多いのですが、
純粋にモノラル再生を楽しむのであれば、最新の広帯域なスピーカーがおすすめです。
モノラル再生では少ない高域成分をロスなく再生する必要があります。
また、高域だけ伸びていたり、低域だけ伸びていると不自然な音になりがちです。
音のバランス調整は、音圧を下げることは容易ですが、上げることは困難で、
最近の広帯域のスピーカーをベースにバランスをとった方が自然な音で再生可能です。
バランス調整はプリアンプのトーンコントロールやグラフィックイコライザーRaicho7mini-geqを活用するのが良いでしょう。
ミニマムオーディオとは最小限のオーディオコンポーネントで構成されたシンプルなオーディオシステムです。
嘗ては寝室やリビングで使用するセカンドシステムとして使われていましたが、
最近ではメインシステムがミニマムオーディオというオーディオファンも。
ひと昔前のマニアックなオーディオシステム以上の音質のシステムも登場しています。
嘗てのミニマムオーディオと言えば、CDプレーヤー、プリメインアンプ、スピーカーでした。
現在では音源がパソコンであったり、スマホからbluetooth経由で再生される方が増えています。
いずれの場合も主役はプリメインアンプとスピーカーシステムです。
これまでのプリメインアンプは40cm幅のものがほとんどでしたが、
ヨーロッパの製品に後押しされるように小型で高品位なプリメインアンプが国内でも出回るようになってきました。
それには2つの要素が考えられます。ひとつめはパーツの小型化です。
ノートパソコンやスマホのように小型で高集積の家電製品が一般的になり電子パーツも小型化高性能化が進みました。
抵抗やコンデンサーといった基本的な電子パーツは1/4程度になっていますし、
半導体は集積回路化が進みデスクリートで組んでいた時代の1/100以下になりました。
尚且つ以前よりも高音質でローノイズなのですから本当に驚きます。もうひとつの要素はデジタルパワーアンプの普及です。
デジタルパワーアンプは発熱が少ないためヒートシンク(放熱器)小型化が可能です。
ただし、こちらは現時点では音質的には満足のいくレベルにはなっていません。
特にダイナミックな低域は未だアナログアンプに軍配があがります。
最近のスピーカーユニットの低域再生能力は著しく向上しています。
振動板には軽くて丈夫な新素材が使用され、ダンパーは嘗てのウレタンからブチルゴムやシリコンゴム系に。
マグネットも磁束密度が高いネオジウムマグネットが使われることも。この20年のスピーカーユニットの進化は目を見張るものがあります。
但し、こういったタイプのスピーカーを十分に鳴らしきるためには、パワーとドライブ能力があるアンプが必要です。
PCオーディオとはパソコンを音源とする再生システムです。パソコンは音源とすることのメリットは以下の通りです。
● 音源の多様性
PCオーディオはパソコンのハードディスク内に保存されたMP3ファイル等の音楽ファイルを再生するだけではありません。
ミュージックビデオ等の動画ファイルの再生も可能ですし、DVDドライブがあれば、CDプレーヤーやDVDプレーヤーとして動作します。
また、インターネットにアクセスすれば、インターネットラジオやポッドキャストで音楽を楽しむことができますし、
YouTube等の動画サイトを見ることもできます。ハイレゾに対応したソフトウェアとD/Aコンバーターを用意すればハイレゾ音源の再生も可能です。
● 高いクオリティ
パソコンの音に対するクオリティの大半はソフトウェアとD/Aコンバーターで決定されます。
安価なパソコンであっても最新のソフトウェアと高品位なD/Aコンバーターを使用することで高音質再生が可能なのです。
また、PCオーディオはこれからも進化し続けるでしょう。
多くのオーディオコンポーネントでは本体を買い替えなければなりませんが、PCオーディオであれば、
D/Aコンバーターのみを交換することで新しい技術や規格に対応していくことができます。
● ローカルネットワークの活用
インターネットのように対外的なネットワークが活用できることはPCオーディオの大きなメリットですが、
家庭内のローカルネットワークもまた、有効活用することで、便利な機能を追加することができます。
たとえば、家庭内でひとつのミュージックライブラリーを全員で共有し、
すべての部屋からライブラリー内にある音楽を再生させることも可能ですし、
将来的にはスマホと連携してミュージックライブラリーを聴くこともできるようになるでしょう。
最近ではスマホやタブレットをメインのオーディオコンポーネントとして音楽を楽しむというケースも多くなってきました。
簡易な再生ですが、寛いで音楽を楽しむのであれば十分なクオリティです。
● 豊富なアプリを使用することが可能
スマホやタブレットでは豊富なアプリを使用することが可能です。
これらの中には特徴的なアプリもあり、高音質なアプリや、トーンコントロールやグラフィックイコライザー等が使用できる高機能なもの、
選曲の操作性が特殊なもの等があります。
また、これらのアプリは頻繁にアップグレードしますので新技術や新しい規格にも対応することができます。
● Bluetoothで便利に
最近ではプリメインアンプにBluetoothレシーバーが内蔵されていたり、
オプションでプリアンプにBluetoothレシーバーを組み込むことができるモデルもあります。
Bluetoothは近年高音質化が進み、低歪でローノイズになりました。現在はVer.4.2とVer.5.4が最新ヴァージョンです。
Ver.4.Xは音質重視の規格であり、Ver.5.Xはバッテリーの消費を少なくしたBluetoothイヤホンや補聴器の規格です。
オーディオシステムに使用するのであればVer.4.1またはVer.4.2を使用するのが良いでしょう。
● サブスクで再生
最近はサブスク(サブスクリプション)の音楽配信サービスを利用されている方も多いようです。
月々1000円程度の料金で1億曲が聴き放題です。配信サービスによってはハイレゾ音源を配信しているサービスもあります。
ただし、ある特定の音楽のジャンルに偏っているサービスもありますので注意が必要です。
● 大画面化
スマホやタブレットの信号端子をHDMIに変換するケーブルも売られています。
こういったケーブルを利用することでスマホの画面を60インチのモニターに映すというようなことも可能です。
昭和レトロブームはオーディオにも影響を与えています。
当時のオーディオコンポーネントに興味をもつ方や、当時の音に魅かれるという方も。
最近では当時を模したオーディオコンポーネントも発売されています。
ここでは昭和レトロオーディオについて解説したいと思います。
● アナログレコード
『レコード盤から音が出るのが不思議』『くるくる回るのがかわいい』という話を若い方からお聴きしました。
若い方は『音質』よりも『昭和のオーディオコンポーネント』に興味をお持ちのようです。
オーディオファンの中にはビンテージオーディオに興味をお持ちの方もお見えですが、そういったものとは少し違うようです。
ガラードやトーレンスのプレーヤーというのではなく、
1980年代のそれほど高価ではない一般的なレコードプレーヤーにインテリアとしての興味をもたれているようです。
こういったレコードプレーヤーはリサイクルショップで数千円で販売されていますが、メーカー修理は行われていませんので、
動作する間だけ使う『使い捨て』です。レコードプレーヤーの修理を行う業者もありますが、修理代は数千円以上必要です。
● 音質
昔の真空管ラジオから再生されるような音質に興味をお持ちの方もあります。
居酒屋さんでのBGMに昭和歌謡を流しているというような場合、コンポーネントは最新のものであることがほとんどで、
音だけをレトロな音にしたいというようなリクエストもありました。
真空管ラジオは再生周波数帯域が狭いのが特徴です。
現在はAMラジオの帯域は100Hz~7.5KHz、FMラジオは50Hz~15KHzです。
真空管ラジオはかつての黒電話の帯域に近く300Hz~3KHz程です。
このような音質にしたいのであればグラフィックイコライザーを使用して300Hz~3KHzのみを通過させるのが最も簡単な方法です。
ムジカの製品ではグラフィックイコライザー Raicho7mini-geqが相当します。
● ローノイズタイプ
トランジスターには使用する用途によって多くのタイプがありますが、
その中でもオーディオコンポーネントに良く使用されるのが低雑音タイプのトランジスターです。
フォノイコライザーアンプやマイクアンプ等の微小信号を増幅する回路に使用されます。
● hfe
トランジスター増幅回路をエミッター接地で使用した場合の直流電流増幅率を意味します。
この値がそのまま電圧増幅率となるわけではありませんが、hfeが低いトランジスターよりも高いトランジスターの方が電圧増幅率が高くなります。
大電流で使用するトランジスターではhfeは低くなる傾向があります。
● 大電力のスイッチング
スイッチング回路は大電力をコントロールするために使用されます。
例えば、100w照明を半分の明るさにする場合、コンセントの電圧は100vですので、100wの電球に流れる電流は1Aです。
オームの法則から抵抗値はV/I=100/1=100オームとなります。この電球を50wで光るようにするのですから電圧は1/√2倍の71vになります。
この時流れる電球は71/100=0.71Aです。電球に71vの電圧を供給しますが、元の電圧は100vなのですから29v分が必要なくなります。
不必要な29vは抵抗器で熱にしてしまうと、その電力は29?0.71=21wとなります。
つまり、100wの電球を半分の明るさの50wにするためには21wの無駄な熱が発生することになります。
この無駄をなくすためには1秒間の内0.5秒は電球を点灯させて0.5秒消灯させても半分の明るさになるはずです。
ただし、このようなスパンで点灯消灯を繰り返すと目にチラチラしますので、
0.0005秒のように超高速で点灯と消灯を繰り返すようにすれば目にチカチカせず半分の明るさに見えるのです。
これをスイッチング回路といい、調光の他ストーブの温度管理等にも使用されています。
● 入力回路
信号が入力されて最初に通過するブロックです。
プリメインアンプやプリアンプではCD、PHONO(レコードプレーヤー)、
AUX(その他の機器)といった入力機器を切り替えるインプットセレクターが相当します。
PHONO入力にはフォノイコライザー回路が必要になります。パワーアンプでは音量設定を行うアッテネーター回路等が含まれます。
● 初段
増幅回路の一番初めのブロックです。
ここでは音楽信号の電圧は低いので、できるだけノイズの影響を受けないようにするため初段でできるだけ高い電圧に増幅します。
● ドライバー段
終段のひとつ前のブロックです。
終段に使用される増幅素子は大電流・高電圧の増幅が可能なように設計されていますが、
増幅率も低く、終段がある程度の負荷となることがよくあります。その終段をドライブするためドライバー段と言われます。
● 終段
増幅回路の最終段です。
● 出力回路
スピーカーセレクター回路等が含まれます。
● 電源回路
全てのブロックに電源を供給するための回路です。
ブロックによって電圧も電流も異なりますのでパワーアンプやプリメインアンプでは数種類の電圧や電流の異なる電源を用意しなければなりません。
● 保護回路
スピーカー端子を短絡させたり、過負荷になった時にそれを検出してスピーカーを切り離したり、
電源投入時にポップ音が発生するのを防止したりする回路です。