新スーパーツィーター入門
ハイレゾの普及によって脚光を浴びたスーパーツィーター。実はアナログレコードの時代から使用されているアイテムです。 ムジカでは一般的なスピーカーと組み合わせるためのスーパーツィーターや、高域用のパワーアンプを搭載したツィーター・コントローラーを発売しています。 スーパーツィーターはただ追加するだけで高音質になるものではなく、その選択やセッティングも専門的な知識が必要です。 ここではスーパーツィーターの原理から発展的な使用方法まで、スーパーツィーターに関する情報を判りやすく解説しています。

スピーカーで音楽を再生する際に、大切な要素はいくつかありますが、そのひとつが周波数特性です。
ヒトは20Hzの低音から20000Hzの高音まで聴くことができると言われていますが
ひとつのスピーカーユニットでこれほどの広帯域を再生するのは不可能です。
そこで帯域をいくつかに分けてそれぞれをその帯域専用のスピーカーユニットで再生することによって広帯域化を図っています。
たとえば、3WAYスピーカーシステムであれば、『低域』『中域』『高域』の3つの帯域に分割してその帯域専用のスピーカーユニットで再生します。
低域を担当するのが『ウーハー』、中域が『スコーカー』、高域が『ツィーター』です。
一般的なツィーターは数キロヘルツから数十キロヘルツを担当しますが、さらにその上の周波数を担当するのがスーパーツィーターです。
ムジカのスーパーツィーターの中で最も広帯域のものは10KHz~100KHzを再生します。
ヒトは20Hz~20KHzしか聴くことができないのですからそれよりも高い周波数を再生することは無意味だという方もあります。
確かに単音では20Hz~20KHzしか聴くことができませんが、楽器の音は倍音成分をたくさん含んだ音であり、単音ではありません。
ストラディバリウスというバイオリンがあります。
17世紀~18世紀に製作されたたいへん高価な楽器ですが、
その音色には20KHz以上の周波数の現代の楽器には含まれない倍音成分が重畳していると言われています。
また、アナログレコードがデジタル録音のCDに置き換わったとき、その音質に違和感を感じたデジタル録音を行うエンジニアは多かったように思います。
CDの高域上限周波数は20KHzです。これを問題視したエンジニアは、その後新たなメディアが発売される都度高域上限周波数を上げていき、
DATでは24KHz、DVDでは50KHzに、ブルーレイではとうとう100KHzになりました。
最近ではハイレゾ技術によって100KHz以上まで収録された音源も存在します。
これほどまでに最新のデジタル技術のエンジニアが執着した周波数の広帯域化が無意味でないことはお判りいただけると思います。

●スーパーツィーターの設置位置
スーパーツィーターはツィーターの上の高い周波数帯域を再生する専用のスピーカーで、ツィーターを補助するためのスピーカーですのでツィーターの近くの設置するのが理想です。
また、ヒトは音が横方向に移動した場合は敏感に反応しますが、上下方向には鈍感です。これは左右の耳が位相差を検出しているためです。
そのためメインスピーカーのツィーターの横ではなく、上に置くほうが自然な音場を得ることができます。
●ネットワーク
スーパーツィーターに10KHz以上の周波数を受け持たせる場合、10KHz以下の音楽信号がスーパーツィーターに入力されないようカットする必要があります。
この機能を持つ回路がデバイディングネットワークです。単にネットワークと呼ばれることもあります。
スーパーツィーターが受け持つ周波数の下限をカットオフ周波数といいます。
スーパーツィーターのカットオフ周波数は10KHz前後が一般的ですが、これはメインとなるスピーカーの周波数特性が大きく影響しています。
仕様では50KHzまで伸びていつと記載されていても中域と同じ音圧レベルであることは稀です。
スーパーツィーターのカットオフ周波数はそれらを考慮して総合的に判断する必要があり、
仕様に50Hz~18KHzと記載されたメインスピーカーでスーパーツィーターのカットオフ周波数を18KHzとするのは必ずしも最適ではありません。
●音圧レベルを合わせる
メインスピーカーが再生する音圧とスーパーツィーターが再生する音圧は合わせることが無難です。
カタログ等に〇〇dB/m/wのように書かれている数値が音圧です。
アルテックA7のように音圧100dBを超えるスピーカーには高能率のスーパーツィーターが必要です。
逆に、音圧が86dB程しかないスピーカーにスーパーツィーターを組み合わせる場合は音圧を下げるためのアッテネーターが必要になる場合があります。
もっとも、1~2dB程度の差であればそれほど神経質になることはありません。

●軸を合わせる
スーパーツィーターは主に10KHz以上の周波数を再生する超高域専用のスピーカーですが、
この帯域の音波は直進性が強くスーパーツィーターの軸をリスナーの方向に正確に向けなければなりません。
上図はフォスター社の代表的なドームツィーターFT-28Dの周波数特性です。
高域部分は実線と点線とで書かれていますが、実線はツィーターユニットの軸をリスナーの方向に正確に向けた場合の周波数特性、
30°とある点線は軸をリスナーの方向から30度ずれた場合、60°とある点線は軸をリスナーの方向から60度ずれた場合の周波数特性です。
このグラフによるとこのツィーターは10KHzでは30度ずれると5dB減衰し、60度ずれると13dB減衰します。
20KHzでは30度ずれると10dB減衰し、60度ずれると20dB減衰します。
20dB減衰するということは音量が1/10に小さくなることを意味します。
スーパーツィーターでは高域特性が優れたユニットを使用することは重要ですが、それ以上に正確に軸を合わせてを設置することが大切です。
●前後の位置を合わせる
音波とは空気の気圧が高い部分と低い部分が波のように交互に移動することで発生する波動現象です。
つまり音楽信号は密度が高い空気と密度が低い空気が交互にやってくることで音の波を形成しています。この波の1周期分の距離を1波長といいます。
波長は周波数によって変化し、中域の1KHzでは34cmですが、20KHzでは1.7cmです。
1波長の1/2(半波長)の距離で波形の正負(空気の密度の高い部分と低い部分)が逆転しますが、
これはスピーカー端子のプラスマイナスを逆に接続した状態(逆相接続)と同じと考えることができます。
つまりスーパーツィーターのように高い周波数を扱うスピーカーユニットでは前後に8.5mm動かすだけで逆相接続と同じような状態になってしまいます。
スーパーツィーターをメインスピーカーの上に設置するにさいしてはミリ単位で正確に位置合わせを行う必要があります。

●給電の方法
スーパーツィーターに音楽信号を供給する方法は主に3つです。メインスピーカーの端子から給電する方法、
メインスピーカーと同じパワーアンプから直に給電する方法、スーパーツィーター専用のパワーアンプから給電する方法です。
最も手軽で多くの方が行っているのはメインスピーカーの端子から給電する方法です。
この場合パワーアンプからメインスピーカーまでの伝送経路がメインスピーカーと兼用されることになり
大きな減衰が発生したり、歪が増えてしまう可能性があります。
それを解消するのがメインスピーカーと同じパワーアンプから直に給電する方法です。
この場合スーパーツィーター用として長いスピーカーケーブルが必要になりますが、音質の改善は著しく多くの方にお勧めできる給電方法です。
さらに高音質を狙うのであれば、スーパーツィーター専用のパワーアンプを用意し、
もちろんスピーカーケーブルも専用のスピーカーケーブルを使用することによって低歪でフラットな周波数特性で再生を行うことができるようになります。
●スピーカーケーブル
一般的なスピーカーでは低域から高域まで全帯域が再生されますが、スーパーツィーターでは超高域のみが再生されます。
そのため全体域で再生して好みに合わなかったスピーカーケーブルであってもスーパーツィーターではOKということもあり得ます。
スーパーツィーターは低域とは違い音のエネルギーが高密度であることよりも周波数特性が広帯域であることや低歪であることが重要です。
ムジカでは多くのスピーカーケーブルを試してみましたが、スーパーツィーター用としてお勧めできるのがアンテナ用の同軸ケーブルです。
本来高周波用ですので周波数特性は良く、損失もとても少なくなっています。
問題点は端末加工が複雑でホームセンターで販売されているスピーカーケーブルの感覚では全く歯が立ちません。
またケーブルが硬く、重量が軽いスーパーツィーターではひっくり返ってしまうかもしれません。

●インシュレーター
インシュレーターはスピーカーの下に置くことでスピーカーの振動をコントロールするアクセサリーです。
スピーカー全体を乗せるボードのようなタイプや、コインのような形状でスピーカーの角に置いて使用するものもあります。
これらの効果はスーパーツィーターにも有効です。
一般的なスピーカーシステムでは『外部からの振動をカット』と『スピーカー自身が発生する振動を外部に伝えないため』にインシュレーターを使用しますが、
スーパーツィーターでは自身が発生する振動はほとんどありませんので外部からの振動を遮断する性能を重視して選択します。
硬いインシュレーターよりも柔らかいゴム系のインシュレーターが最適です。硬いインシュレーターと柔らかいインシュレーターを組み合わせて使用するのもお勧めです。
●固定方法
スーパーツィーターの帯域では僅か数ミリの移動によって特性が変化します。
古くからあるホーンツィーターのように重量のあるスーパーツィーターでは移動することは少ないと思いますが、
現代のスーパーツィーターはリボン型やドーム型が多く、マグネットは最新のネオジウムマグネットが使用されていることが多いので軽量に作られています。
そのためスーパーツィーターの位置をしっかりと固定しておく必要があります。
スーパーツィーターの固定はインシュレーターを含め総合的に選択することによって低歪の再生音が期待できます。
●端子の種類
スーパーツィーターの入力端子はバナナ端子やY端子、電線直付け用の端子等があります。
スーパーツィーターは大電流が流れるわけではありませんので大型の端子である必要はありません。
しかし、ガタツキや緩みは高音質化を妨げる原因となりますので、電線をバネの力で挟み込むだけという端子はお勧めできません。
バナナ端子は抜き差しに便利ですが、接触抵抗も低くノイズも少ないのでお勧めです。

●リスナーから見た設置位置
スーパーツィーターが再生する帯域は直進性が高いためスーパーツィーターの軸をリスナーの耳の方向に向けなければなりません。
これは左右の向きだけではなく、高さにも言えることです。メインとなるスピーカーの上にスーパーツィーターを設置することが多いと思いますが、
スーパーツィーターの軸が耳の位置とずれている場合はスーパーツィーターの上下方向を調整しなければなりません。
スーパーツィーターの前側だけ、または後側だけに薄いインシュレーターを使用して角度をつけるのが有効です。
コインでも代用することができます。
また、リスナーの位置が変わったり、複数のリスナーがいる場合はスーパーツィーターの軸をリスナーに向けることは難しくなります。
コンサートホールでは複数のツィーターを扇状に配しサービスエリアを広げるといった手法が用いられます。
ホームオーディオにおいても2組のスーパーツィーターを扇状に設置されているオーディオファン宅で聴かせていただいたことがありますが、
有効な方法であると感じました。
●壁からの反射
スーパーツィーターが再生する帯域は直進性が高いので反射に関してはそれほど気を遣うことはありません。
しかしながら放射する軸から30度ずれていても-10dB(1/3)程度の音圧で再生されますのでその範囲に壁がないようにすると音場が鮮明になります。
もし壁があったとしても対策は比較的簡単です。
スポンジ等でできた吸音材や吸音パネルは超高域では良好な吸音特性を示しますので
これらを壁に貼る等の対策でかなりの反射を抑えることが可能です。
●感覚的な対応を
一般的なスピーカーでは音は放射状に広がっていきますが、スーパーツィーターでは音はレーザーポインターのように直線で進むという感覚が必要です。

スーパーツィーターに使用されるスピーカーユニットにはいくつかの形式があります。
その中でムジカの現行モデルに使用されているスピーカーユニットについて解説します。
●ハードドーム型
ハードドーム型はムジカではVer2とVer Duo2の第1ユニットとして使用されているユニットです。
スーパーツィーターとして使用されるよりも一般的なスピーカーシステムでツィーターとして使用されることが多いユニットです。
ドームツィーターは振動板にアルミやチタンが使われています。そのため振動板の質量が大きくなり、40KHz程度までしか再生することができませんでした。
これではスーパーツィーターとしてはやや不足です。
ムジカで使用しているハードドーム型ユニットは振動板にベリリウムと銅の合金が使用されています。
この合金は強度が高く、非常に薄く(厚さ0.015mm)圧延することが可能です。そのため60KHzまでの帯域を再生することが可能です。
●リボン型
リボン型はムジカではVer100の第1ユニットとして使用されているユニットです。
ハードドーム型では振動板にコイル部を接着する必要がありました。
そのため振動板を軽量化してもコイル部の質量が問題となり、振動系全体の軽量化には限界がありました。
リボン型は薄い樹脂製のフイルムにアルミ箔を蒸着させて、それ自身をコイルとして機能させることによって
軽い振動系と軽いコイル部を実現したものです。
反面リボン型は、いくつかの問題を抱えたユニットで一部の超高級モデルを除いて近年まで使用されることは稀でした。
しかし、ネオジウムマグネットの出現によって僅かな電気エネルギーでも振動させることが可能になりました。
また、以前は樹脂板にアルミ箔を接着していましたが、近年では蒸着の技術が進みより丈夫で軽い振動板を作ることが可能になりました。
スーパーツィーターに使用されるスピーカーユニットにはいくつかの形式があります。
その中で、ムジカの現行モデルに使用されているスピーカーユニットについて解説します。『スーパーツィーターの種類1』の続きです。
●セラミックスピーカー
セラミックスピーカーはムジカではVer100の第2・第3ユニットとして、Ver2とVer Duo2の第2ユニットとして、そしてVer Zero2に使用されているユニットです。
このタイプは電磁気による振動ではなくピエゾ効果を使用しているため非常に高い周波数まで使用することが可能です。
Ver100の第3ユニットは100KHzという超高域までの再生を実現しています。
反面、セラミックスピーカーは帯域が狭くフラットな特性を実現するためには特性の異なるユニットをいくつか使用して広帯域化を図るという手法が用いなければなりません。
スーパーツィーターVer100では10KHz~40KHzをリボン型、40KHz~75KHzをセラミック型、75KHz~100KHzを小型のセラミック型とし、100KHzまで再生を可能にしています。
●ホーンスピーカー
ホーンスピーカーはムジカではパワーアンプを内蔵したアクティブ型のスーパーツィーターs2に使用されているユニットです。
ホーンスピーカーの帯域はホーン開口部の面積とスロートの形状によって決定されます。
理論上はホーンの開口部を小さくすればするほど高い周波数まで再生することが可能ですが、振動を発生させるホーンドライバーの周波数特性の上限に限界があるため
あまり高い周波数まで再生することは困難でした。
現在は上記のセラミックスピーカーと組み合わせることによって従来よりも高い周波数の再生が可能になりましたが、十分とは言えず広帯域化はVer100には及びません。
ホーンスピーカーのメリットは高能率です。アルテックや古いJBLといった高能率・大口径ウーハーと組み合わされることが多いスーパーツィーターです。

スーパーツィーターに使用されるスピーカーユニットにはいくつかの形式があります。
『スーパーツィーターの種類1・2』に続き、ムジカの現行モデルに使用されていないスピーカーユニットについて解説します。
●コーン型
振動板の形状が円錐状になっているためコーン型と呼ばれています。
現在のコーン型スピーカーではセンターキャップが取り付けられていることが多く円錐型ではありません。
昭和30年代までのスピーカーはセンターキャップがないものが多く、まさにコーン型スピーカーでした。
現在のコーン型スピーカーと形状が似通ったスピーカーにドーム型があります。
極論を言えば、コーン型スピーカーで振動板面積が小さくなり、ボイスコイル径と同じになったものがドーム型スピーカーです。
つまりドーム型スピーカーの低域限界を拡張するために振動板面積を広げたものがコーン型スピーカーであるとも言えます。
そういった意味では超高域のみを再生するスピーカーとしては最適ではないかもしれません。
しかしながら、設計の自由度が高く安価に生産できることから低価格帯のスーパーツィーターに使用されることがあります。
●放電型
音楽を再生するためには空気の振動を発生させる必要があります。
一般的なスピーカーでは振動板を振動させて空気の振動を作り出しますが、高い周波数を再生するためには振動板の質量を小さくする必要があります。
理論的には振動板の質量を無限に小さくしていけば、無限に高い周波数まで再生することができるようになります。
放電型スピーカーは雷と同じように、空気中に高圧を発生させその電圧に音で変調をかけることで音楽再生を実現しています。
放電型スピーカーには振動板がありませんので、原理だけを考えると理想的です。
しかし、高圧を発生させるための特別な電源回路が必要で、高圧がかかる電極には付着物が付きやすく、良い状態を維持するためには定期的なメンテナンスが欠かせないスピーカーです。